研究概要 |
π 共役分子は一般に剛直な芳香環や多重結合(おもにsp2 炭素)から構成されるため,必然的に剛直な構造をもつものが圧倒的に多い。このため、π 共役分子は狙った形のものを作りやすく,物性面でも多くの強みをもつ。しかし,基本となる分子骨格が剛直であるということは無機材料に似て,構造の柔軟性に由来する物性の変換は難しく,静的な物性の発現に留まっていると考えることもできる.本研究者は、「π 共役骨格を動かす」という視点に基づき,剛直性の利点を活かしつつ柔軟性を兼ね備えた一連のハイブリッドπ 共役分子をうみだし,1.分子の動きを活かした単成分多重発光材料の開発(J. Am. Chem. Soc., 2013, 135, 8842, Chem. Eur. J., 2014, 20, 2193)と新しい可視化技術の創出(特願2013-257581),2.「すり潰す力」と「圧し縮める力」を見分けられる発光材料の開発(J. Am. Chem. Soc., 2013, 135, 10322)を実現した。特に1の材料は、単成分にもかかわらず、環境に応じて分子が励起状態の形を変えることで光の3原色であるRed、Green、Blueの3色の発光を示す。また、この分子を微量添加物として接着剤(有機溶媒を含むタイプ)に混ぜ込むことで、硬化の過程をリアルタイムで可視化することに成功しており、硬化が不十分な箇所の特定や硬化完了の確認に用いることができる。
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