研究課題/領域番号 |
24750043
|
研究種目 |
若手研究(B)
|
研究機関 | 山口大学 |
研究代表者 |
西形 孝司 山口大学, 理工学研究科, 准教授 (90584227)
|
研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
|
キーワード | 有機化学 |
研究概要 |
本年度は、鉄によるアルキル化反応を行うための基礎データを取得するため、まず、鉄と同族のルテニウムを用いて各種研究を行った。 1)ルテニウムによる触媒によるエステルを一級アルキル源として利用する還元的アミド化反応:ルテニウム触媒存在下にエステルと二核シランとアミドを反応させると、効率的に還元的アルキル化を行えることを見出した。これにより、1級アルキル基を窒素上に室温で導入することが実現した。アミンとハロゲン化アルキルのSN2反応ではオーバーアルキル化が問題となるため、一級アミン合成には過剰量のアミンの添加が必要であり、深刻な場合には、還元的アミノ化が代用されるが、本反応ではそれらをルテニウムを用いて克服することができた。ルテニウムと同族の鉄を本反応に適用できる可能性が見出された。 2)エステルを三級アルキル源として利用するアミドの三級アルキル化反応とそれによるアザスピロ環合成:一般に三級アルキル基は、カルボカチオン中間体の反応性を利用するSN1反応を経由して行われる。しかし、この反応はE1反応も伴うため、これらを避けるためにCurtius転位やRitter反応といった方法が用いられる場合が多い。 ルテニウムクラスター触媒とシランの組み合わせは、三級アルキルエステルを三級アルキル源とすることを可能にした。さらに二核シランを用いる本系を分子内反応に展開することで、従来合成が困難なアザスピロ環を効率的にかつ温和な条件でアルカロイドの重要骨格を簡便に合成できることを見出した。こちらもルテニウムと同族の鉄を本反応に適用できる可能性が見出された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
24年度は鉄での研究を行うための基礎データ収集を行った。特に鉄と同族のルテニウムを触媒として用いることで、エステルがアルキル基として用いることができるかどうかの検討を中心に行った。研究は、予想以上に順調に進み、エステルを1級アルキル源としてだけでなく3級アルキル源として、さらには、アザスピロ環合成に適用できることを見出した。アザスピロ環を数種類合成できたことは、当初の予想以上の成果である。また、これらの成果はACIE誌に採択された。
|
今後の研究の推進方策 |
今年度は、昨年度に得られたルテニウムの結果を利用して、鉄によるアルキル化反応を行う。 1)鉄触媒によるエステルを一級アルキル源として利用する還元的アミド化反応:鉄触媒存在下にエステルと二核シランとアミドを反応せ、効率的な還元的アルキル化の確立を目指す。特に、アミドやアミンに効率的なアルキル基の導入を目指す。 2)鉄によりエステルを三級アルキル源として利用するアミドの三級アルキル化反応とそれによるアザスピロ環合成:ルテニウムではに三級アルキル基は、カルボカチオン中間体の反応性を利用することによりSN1反応経由で行うことができた。即ち、ルイス酸を鍵とした反応である。これを参考に鉄錯体を設計し効率的なアザスピロ環合成を目指す。さらに、従来合成が困難なアザスピロ環を効率的にかつ温和な条件でアルカロイドの重要骨格の簡便合成を目指す。
|
次年度の研究費の使用計画 |
今年度100万円及び昨年度残額の14万円は、薬品、少額物品の購入および旅費に充てる。申請者は昨年10月に異動となり、新しく研究室を立ち上げた。所属変更に伴う各種手続きにより、当初の計画通りの支出が困難であったため昨年度に残額が発生した。4月からは順調に研究を行える環境が整えることができている。
|