研究課題/領域番号 |
24750043
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研究機関 | 山口大学 |
研究代表者 |
西形 孝司 山口大学, 理工学研究科, 准教授 (90584227)
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キーワード | 鉄 / アルキル化 / スピロ環 |
研究概要 |
本年度は、昨年度得られたアルキル化データの知見に基づき各種研究を行った。 1)エステルを三級アルキル源として利用するアミドの三級アルキル化反応とそれによるアザスピロ環合成:一般に三級アルキル基は、カルボカチオン中間体の反応性を利用するSN1反応を経由して行われる。しかし、この反応はE1反応も伴うため、これらを避けるためにCurtius転位やRitter反応といった方法が用いられる場合が多い。本研究では、3級アルキルアルコールカルボン酸エステルと鉄触媒存在下でアミン誘導体と反応させると、窒素上がアルキル化された生成物を得ることができた。これを分子内反応へと応用すると、目的のアザスピロ環を低収率ながら得ることができた。従来合成が困難なアザスピロ環を効率的にかつ温和な条件でアルカロイドの重要骨格を簡便に合成できることを見出した。こちらもルテニウムと同族の鉄を本反応に適用できる可能性が見出された。 2)上記3級アルキル化反応開発過程において、アルファーハロエステル(3級アルキルエステル)を鉄触媒存在下スチレン誘導体と反応させると5%収率で対応する末端アルケンの3級アルキル化体(Heck生成物)を得ることができた。触媒を各種検討すると銅―多座アミン錯体を用いることでほぼ定量的に生成物を得ることができた。本反応はどのようなハロゲン化3級アルキル基質やスチレン基質であっても室温付近で収率よく生成物を得ることが可能である。あらたな3級アルキル化法として非常に興味深い結果である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
24年度は鉄での研究を行うための基礎データ収集を行い、鉄と同族のルテニウムを触媒として用いることで、エステルがアルキル基として用いることができることを見出した。25年度はルテニウムで得られた知見を鉄に適用することでアミン誘導体の3級アルキル化に成功している。さらに、この研究時過程で、アルファーハロエステル(3級アルキルエステル)を銅触媒存在下スチレン誘導体と反応させると高収率で対応する末端アルケンの3級アルキル化体(Heck生成物)が得られることを見出した。 研究は、予想外の結果を得られ想定以上に順調に進んでおり、これらの成果はJACS誌に採択された。
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今後の研究の推進方策 |
今年度は、昨年度に得られた鉄および同周期の銅の結果を利用して、鉄によるアルキル化反応(3級アルキル化およびアザスピロ環)と得られたスピロ環の応用を行う。 1)鉄によるエステルを3級アルキル源として利用する環化反応:分子内でアザスピロ環を構築する分子を設計し、鉄触媒により効率的な反応を構築する 2)光学活性アザスピロ環合成とその配位子としての利用:合成したスピロ環にリンを導入し、遷移金属触媒反応、例えば水素化反応やカップリング反応への適用を目指す。さらに、従来合成が困難なアザスピロ環を効率的にかつ温和な条件でアルカロイドの重要骨格の簡便合成を目指す。
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