研究課題
研究代表者は本年度,シロールを組み込んださまざまなパイ共役系分子について理論計算を行い,それらのLUMOのエネルギー準位が,シロールをもたない対照化合物よりも低く,電子アクセプター性を示すことを明らかにした.さらに,それらの中性状態とラジカルアニオン状態の間での電子移動にともなう再配列エネルギーは,一般的な電子求引基をもつアクセプター分子のものよりも小さいことを見出した.すなわち,パイ共役系にシロールを組み込むという分子設計は,再配列エネルギーの上昇を招くことなくLUMOのエネルギー準位を下げることが可能であることがわかった.再配列エネルギーが小さいほど二分子間での電子移動確率が上昇することを考慮すると,パイ共役系にシロールを組み込むという手法は,新たな電子輸送材料の設計に有用な分子設計指針であるといえる.さらに,理論計算を行ったそれら分子の合成を試み,反応系中で生成しているところまで確認したものの,水分に対して敏感であり,単離には至らなかった.今後は,より安定性の高い分子を設計し,その合成を達成する予定である.研究代表者は,組み込むヘテロ元素がケイ素でなくゲルマニウムであっても,上記と同様のLUMO準位の低下が起こることを理論計算で確かめ,現在それらの合成を検討している.
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