研究概要 |
本課題では、環境応答性を有する発光性Pt(II)錯体配位子をベースにした配位高分子系に対して、1)ナノ結晶へのダウンサイジング、2)異種発光団のドーピング、の2つのアプローチを併用することで、環境応答性(応答速度、認識能力等)の劇的向上を目的に研究を展開している。これまでの環境応答性錯体に関する研究が、分子もしくはバルクレベルに限られていたことを考慮すると、ナノサイズ効果やドーピングによるエネルギー、電子移動過程の制御は、ベイポクロミック材料における劇的性能向上と新機能創出につながる可能性を秘めている。 研究初年度は、ドーパントとして機能し得る異種発光団のライブラリ構築を目指し、新規Pt(II)錯体の合成を中心に検討した。これまでのところ、室温、蒸気曝露によって分子の形状を変化させることが可能な錯体[Pt(SCN)2(H2dcbpy)](H2dcbpy = 4,4'-dicarboxy-2,2'-0bipyridine)や、エネルギー移動による選択的発光を実現するための鍵となる拡張π系を有するPt(II)錯体[Pt(CN)2(H2dcphen)](H2dcphen = 4,7-dicarboxy-1,10-phenanthroline)の合成に成功しており、いずれの錯体も蒸気による発色・発光色変化(ベイポクロミズム)を示すことを見出した。これは、ナノ結晶へのダウンサイジングや異種発光団としてドーピングすることによって、さらなる応答性向上を期待させる発見と考えられる。
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