研究概要 |
本研究ではポリピリジン系多座配位子を補助配位子としてもちいた架橋性ポリシアノ錯体の構築を検討した。ポリシアノ錯体は修飾可能な補助配位子を持っており、適切な補助配位子を導入することで様々な機能性を付与することができると考えられる。これまでの研究からポリピリジン系多座配位子の存在下、シアン化物イオンと鉄イオンを反応させることで、架橋性ポリシアノ錯体が得られることが予想される。そこで、本研究では、これまでに知られている補助配位子とは異なる配位子系で架橋性ポリシアノ錯体が構築可能かどうか検討を行った。まず、3つの3座配位サイトを有する2,4,6-tris-(2-pyrimidyl)-1,3,5-triazine (L1)を多座配位子としてもちいた場合には、架橋性トリシアノ錯体K[Fe(L1)(CN)3]が得られた。この架橋性錯体を構築素子としてもちい、Fe-Mn一次元鎖錯体およびFe-Fe混合原子価一次元錯体の合成に成功した。また、発光特性を持つ配位子2-(1H-Benzoimidazol-2-yl)-pyridin-3-ol (L2)をもちいてポリシアノ錯体の合成を検討した結果、pHに依存した酸化還元挙動および蛍光特性の変化を示すテトラシアノ鉄錯体K3[Fe(L2)(CN)4]が得られることが分かった。以上の結果から、2座および3座のキレートを有する多様な多座配位子をもちいることで、架橋性シアン化物イオンを有する構築素子が開発可能であることを明らかにした。今後、多核化したポリシアノ錯体構築素子や外場による明確なスイッチング機能をもつ構築素子を開発し、動的物性を示す機能性集積型金属錯体の開発を行う。
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