研究概要 |
ジャングルジム型多孔性錯体,[Cu2(L)2(dabco)]n (L = dicarboxylate, dabco = 4-diazabicyclo[2,2,2]octane) のLを様々に変えたサンプル合成した.配位子Lにdmbdc (= 2,3-dimethoxy-1,4-benzenedicarboxylate)を用いた化合物は400 Kにおいて正方晶系のジャングルジム様構造を有しており,配位子中のメトキシ基が4サイトにディスオーダーしていた.300 Kから冷却して行くと,280 K付近から回折パターンに超格子ピークが観測され,解析の結果これらはメトキシ基のオーダリングに伴うピークであることがわかった.誘電率測定の結果,室温以下の温度領域において誘電率に周波数に依存しない大きな値の変化が観測された.これはメトキシ基のオーダー・ディスオーダーを伴う構造転移に起因するものと現在考えている.一方,配位子LにR-bdc (R = 2-methoxy-,2-nitro-,2-chloro-,2,3-difuluoro-,2-bromo-, 2,3,5-trifluoro-)を用いた化合物では,誘電率虚部に周波数分散が観測され,配位子が回転運動する際に乗り越えるエネルギー障壁の大きさが10-30 kJ mol-1程度であることが明らかとなった.これらの化合物にCO2を吸着させて誘電率の測定を行った所,LにR-bdcを用いたものではエネルギー障壁の大きさの増大が見られたが,Lにdmbdcを用いたものではCO2の導入圧に応じて誘電率の値が大きく変化することが分かった.以上のように,ガス吸着と配位子の運動性をリンクさせた誘電材料を得るためには,構造相転移を伴わせることが重要であることが分かった.
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