研究概要 |
本年度は、(1)ヒドロゲナーゼを範とする分子燃料電池の反応メカニズムの解明(化学、2013、68、12-16、現代化学、2013、68、52-57)と(2)ヒドロゲナーゼを範とする新規水素活性化触媒の開発(Eur. J. Inorg. Chem. 2013, 3978-3986)を行った。 (1)ヒドロゲナーゼを範とする分子燃料電池の反応メカニズムの解明 これまでに分子触媒を電極触媒に用いて水素燃料電池を開発した報告例はない。本若手研究(B)では、ヒドロゲナーゼの反応メカニズムを範とし、水素と酸素を選択的に活性化可能なニッケル・ルテニウム触媒を開発した。これまでにそれらの分子触媒を用いた水素燃料電池を作成し、発電させることに成功している。今年度は、アノード(水素極)とカソード(酸素極)での電極反応メカニズムの解明を行った。不均一系固体触媒とは異なり、水溶性分子触媒を用いることで、燃料電池の排液に含まれる化学種を、種々の分光学的、質量分析的手法で分析することが可能となった。また、ターフェルプロットやインピーダンススペクトルによる解析の結果、現在のところ、電極反応の速度や抵抗は白金に及ばないが、新しい研究分野であるため、今後の発展が期待できる。 (2)ヒドロゲナーゼを範とする新規水素活性化触媒の開発 研究が順調に進展したため、本年度は、ヒドロゲナーゼを範とし、水素燃料電池のアノード触媒となりうる水素活性化触媒の開発を行った。新規イリジウム錯体を開発し、触媒的な水素の酸化反応システムを構築し、その水素活性化の反応メカニズムを解明した。その結果、これまでに明らかにできなかった還元活性種の単離と結晶化に成功した。今後はこの新規触媒の水素燃料電池の電極触媒への応用が期待できる。
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