研究課題
若手研究(B)
本研究は、多孔性配位高分子の骨格構造に、外場応答部位としてのスピン転移サイトと触媒活性なオープンメタルサイトを合理的に配列させて、内部細孔を利用したゲスト分子認識、および機能性サイト間の相互作用と電子状態制御により、単独では発現し得ない創発的な機能発現を目的とする。本年度は室温領域にヒステリシスを有するスピン転移を示す多孔性配位高分子 {Fe(pz)[Pt(CN)4]} (1; pz = ピラジン) を用いて、両スピン状態での構造解析を行い、高スピン相では低スピン相と比較して、細孔サイズが約30%膨張することを明らかとした。また、様々な溶媒分子をゲスト分子として用いたところ、ゲスト分子の吸脱着を化学的刺激とするホスト骨格のスピン状態の可逆的な返還に成功した。次に細孔中に反応基質としてヨウ素、および二硫化炭素を吸着させると、いずれの包接体においても、熱力学的に不利な低スピン相の安定化が観測され骨格と基質分子間に強い相互作用が示唆された。また吸着されたヨウ素分子は、加熱による骨格の高スピン相への転移と同期して放出されることを明らかとした。現在、基質包接体に外部刺激として光照射を行い、高スピン相への相転移並びに、スピン転移と同期した反応基質の徐放、放出された基質を利用した、アルケンのヨウ素化及びアルコールのキサントゲン反応の光スイッチングに関しても検討をおこなっている。また、相転移を示す、鉄イオンに反応活性な鉄‐ポルフィリン錯体をピリジン及び、イミダゾールを介して配位させ、相転移と連動した反応活性部位のサイズ、並びにルイス酸性度の可逆的変換を目指した新規錯体合成に関しても試みたが、目的とする錯体は得られなかった。
3: やや遅れている
光スイッチングに基づく反応制御を目指して研究を行った。反応基質の選択的取り込みと、光照射による徐放に関しては一部明らかとなったが、反応系の制御には至らなかった。またオープンメタルサイトを利用した能動的な触媒活性の可逆的変換は用いる錯体配位子の選択を含めて再検討が必要だと考えられる。
錯体1 を用いた反応基質の選択的吸着と、光照射による基質の徐放に関してはこれまで同様研究を行い、ヨウ素、二硫化炭素以外に反応基質になりうるゲスト分子についても検討を行う。また、骨格を形成するピラジンを変化させることにより、より大きな反応基質の吸脱着制御を行う。反応活性な錯体配位子に関しては、鉄‐ポルフィリン錯体に加えて、共同研究を通じて、カタラーゼ活性や、SOD活性を示す、Mn並びにCo錯体を錯体配位子として用いて多孔性配位高分子を合成することを検討する。
該当なし
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