研究概要 |
今年度は、「1.ハーフサンドイッチ型三核チタンヒドリ錯体を用いた窒素の切断・水素化」および「2.チタンイミド錯体の水素化によるアンモニアの生成反応」について取り組んできた。 1. ハーフサンドイッチ型三核チタンヒドリド錯体を用いた窒素の切断・水素化:今年度初頭に、3つのチタンからなる三核チタンヒドリド錯体を用いた常温常圧での窒素の切断・水素化反応を報告した (Science 2013, 340, 1549.)。本報告では、常温・常圧で窒素分子のN-N結合の切断とN-H結合生成反応が進行するメカニズムの詳細を調べるために、同位体元素15Nでラベルした窒素分子を用いた反応解析、速度論的解析によるエネルギー算出や、計算化学によるメカニズム解明などを報告した。その後新たな知見として、4つのチタンからなるイミド―ヒドリド錯体が窒素および水素と反応することを明らかにし、N-N結合の切断、N-H結合生成反応が進行することを見出した。この反応では反応初期に窒素上の水素が切断され、水素分子の可逆的脱離が起こり、ニトリド錯体が生じており、この錯体に窒素が反応していくものと考えられる。 2. チタンイミド錯体の水素化によるアンモニアの生成反応:活性化された窒素原子を系外にアンモニアや含窒素有機化合物として取り出すために、高圧水素を用いた水素化反応や、様々な試薬との反応を通して窒素上にヘテロ原子の導入を検討した。残念ながら、チタンイミド錯体に対して高圧水素を付加させて高温で反応させても、反応は進行せず、ほぼ定量的に原料を回収した。しかし、このイミド錯体に対してルイス酸である塩化銅、塩化亜鉛、塩化スカンジウム等を反応させた異種多金属イミド錯体に対して水素を付加すると、アンモニアの生成が確認された。さらにこれらの反応を検討し、金属の組み合わせ、反応条件の最適化を行う。
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