本年度は、昨年度見出したsiRNAを標的とする蛍光性プローブの改良とその機能評価を行った。昨年度、siRNA 構造的特徴である3'末端オーバーハング構造選択的な結合脳を持つプローブとしてPNA-TOを開発し、これがsiRNA オーバーハング選択的かつオーバーハング塩基識別能を有する発蛍光応答型プローブとして機能することを見出していたが、オーバーハングを持たないRNAなどに対する非特異的結合も大きく、その標的siRNAに対する選択性はそれほど高くなかった。そこで、PNA-TO のN末端にピレンを連結した新規蛍光性プローブPy-PNA-TOを設計、合成し、そのsiRNA結合選択性を検討した。その結果、PNA-TOに比べて最低でも3倍以上選択性が向上することを見出した。分光学、計算化学的解析により、得られた高いsiRNA結合選択性はピレン部位がTO部位に分子内スタッキングをすることで、TO部位単独による非特異結合を効果的に抑制していることが示唆された。 上記Py-PNA-TOを用いて細胞内siRNA導入過程の蛍光イメージングを行った。ここでは、siRNAとPy-AA-TOの複合体を形成させた後に、高分子キャリアによるトランスフェクションを蛍光顕微鏡により観察した。その結果、キャリアに内包された複合体から輝点がおもに細胞質から観測された。蛍光色素修飾siRNAを用いた実験結果と併せて考察すると、プローブはキャリアに内包されている状態では蛍光を示すが、キャリアが崩壊し、細胞質に複合体が放出されると、プローブはすみやかにsiRNAから解離し無蛍光となることが分かった。一方で、重要なことに解離したプローブは細胞内に存在するRNAなどに結合せずバックグラウンド蛍光が極めて小さいことが分かった。したがって、本研究で開発したプローブはポリマー内包siRNAを選択的に可視化し、siRNA細胞導入過程を明瞭に解析できる新しいタイプの蛍光性プローブとして機能することが示唆された。
|