研究概要 |
本研究は、1. コンプトンプロファイルを用いたリチウムイオン電池の電極材料内におけるLi濃度非破壊定量法の確立と、2. コンプトン散乱法によるLiイオン濃度の変化に伴う電子構造の解明を目的としている。本年度は、LixMn2O4 (x=0.5, 1.1, 1.2, 1.8, 1.9, 2.0, 2.1, 3.3)にコンプトン散乱法を適用し、実験より得られたデータを解析することにより、以下のような成果を得た。 1に関して、コンプトン散乱されたX線のエネルギースペクトル、および、エネルギースペクトルから得られるコンプトンプロファイルが、試料内のLi濃度に応じてその形状を変えることが分かった。そこで、コンプトンプロファイルの形状の違いを数値化するため、新たにSパラメータを導入した。このSパラメータは、Li濃度に敏感なパラメータである。解析の結果、実験より得られたSパラメータが、高周波誘導結合プラズマ(ICP)発光分析法から得られたLi濃度と線形関係にあること、さらに、第一原理バンド計算、および、原子モデル計算から得られた理論的なSパラメータとも非常によく一致することが分かり、本研究において、LixMn2O4のLi濃度についての検量線を決めることに成功した。 コンプトン散乱法の特徴は、入射X線に100keV以上の高エネルギーのX線を用いることであり、高エネルギーのX線は、高い物質透過能を有する。このような高エネルギーのX線を用いるLi濃度の分析手法は他にはなく、本分析手法を用いることにより充放電をさせながら、大型蓄電池内のLi濃度の定量が可能となる。現在、以上の成果をまとめた論文を投稿中である。 2に関しては、昨年度の成果を論文にまとめているところである。
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