研究課題
本研究の目的は、リチウムイオン二次電池の充放電に伴い電極間を移動するリチウムの濃度を決定する手法の開発と、充放電時に起こる電極反応の詳細を明らかにすることである。本年度は、これまでに開発したコンプトンプロファイルの形状の違いを利用したリチウム濃度解析法(コンプトンプロファイルのラインシェイプ解析法)を市販のリチウムイオン一次電池に適用し、放電時に負極から正極に移動するリチウム量を求めた。試料はコイン型の一次電池(CR2032)である。まず、正極内のコンプトンプロファイルの形状を調べた結果、放電開始時と放電終了時で異なることがわかった。これは放電によりリチウムイオンが負極から正極に移動していることを示している。そこで、コンプトンプロファイルの形状の違いを数値化するパラメータを用い、以前の研究で得られたリチウム濃度検量線と比較することでリチウム濃度の時間変化を得ることに成功した。
2: おおむね順調に進展している
本申請課題は、リチウムイオン二次電池の充放電に伴い電極間を移動するリチウム濃度の決定手法の開発と、充放電時の電極反応の詳細を明らかにすることである。これまで、1) LixMn2O4正極材料のリチウム挿入に伴う電子構造の変化をコンプトン散乱法により調べ、本材料の電極反応には従来考えられているマンガンの価数変化は起きていないことを見出した。また、2) コンプトン散乱法により得られるコンプトンプロファイルのラインシェイプ解析法によりリチウム濃度の定量が可能であることを示した。1)の成果は論文にまとめ、採択を得ることができた。2)の成果は、現在論文を投稿中である。以上のことから、本申請課題はおおむね順調に進展していると考えている。
今後は、昨年度得られたコンプトンプロファイルのラインシェイプ解析法をCo系、および、Fe系の正極材料に適用し、リチウム濃度を推定するための検量線を得ることと、これら正極材料のリチウム挿入に伴う電子構造の変化を調べる研究を行っていく予定である。
昨年度までにコンプトンプロファイルのラインシェイプ解析法を用いたリチウム濃度の非破壊定量法の開発を行った。成果を論文にまとめ、投稿したところ編集者より更なる解析の必要性の指摘を受けた。そこで、本手法の応用例を示すための解析を追加することとした。本差額分は論文の投稿料、および、別刷りの印刷費で使用する予定であったため未使用額が生じた。
現在、コンプトンプロファイルのラインシェイプ解析法によるリチウム濃度定量法の開発に関する論文を投稿中である。次年度に繰り越した差額分は、この論文の投稿料と別刷りの印刷費として使用する。
すべて 2015 2014
すべて 雑誌論文 (1件) (うち国際共著 1件、 査読あり 1件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (3件)
Physical Review Letters
巻: 114 ページ: 087401-1-6
10.1103/PhysRevLett.114.087401