研究課題/領域番号 |
24750069
|
研究種目 |
若手研究(B)
|
研究機関 | 山口大学 |
研究代表者 |
安達 健太 山口大学, 理工学研究科, 准教授 (80535245)
|
研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
|
キーワード | フォトクロミズム / ポリオキソメタレート / アミノ酸 / 吸着 / ナノ粒子 / センシング / 分析化学 |
研究概要 |
本年度(平成24年度)は、アミノ酸化合物表面吸着に伴う酸化タングステン(WO3)表面増強フォトクロミズムに関する基礎的研究を推進した。具体的実施内容は以下の通り。 (1)アミノ酸高感度センシングに適したWO3コロイド粒子の合成・評価技術の確立 アミノ酸高感度センシングに適したWO3コロイド粒子の合成・評価技術の確立を指向し、比較的安価なタングステン酸ナトリウムを出発材料としたWO3ナノコロイド粒子の合成手法を確立した。合成したWO3ナノコロイド粒子のキャラクタリゼーションの結果、主として三酸化タングステン2水和物(WO3・2H2O)結晶から構成されていることが判明した。また、バンドギャップエネルギーは、3.21 eVであり、この値は文献値と一致した。しかし、BET表面積が、11.8 m2/gと小さいため、今後WO3ナノコロイド粒子の表面積向上に関する新たな検討が必要であると考えている。 (2)アミノ酸吸着表面増強フォトクロミズムの定量的理解 上記の合成したWO3ナノコロイド粒子を用いて、ナノコロイド粒子表面へのアミノ酸吸着挙動と表面増強フォトクロミズムとの関係を調査した。親水性と疎水性のバランスを考慮し天然アミノ酸化合物群の中からL-フェニルアラニン(Phe)を選択した。Pheは静電的相互作用を駆動力としてWO3ナノコロイド粒子表面に単分子吸着することが判明した。興味深いことに、WO3ナノコロイド粒子水溶液のフォトクロミズム強度と粒子表面に吸着したPhe量との間に、直線関係が確認された。この結果は、高感度なアミノ酸化合物比色センシングを達成するうえで極めて重要な知見である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
アミノ酸高感度センシング能を有するWO3ナノコロイド粒子の合成、そして評価技術を確立した。 また、WO3ナノコロイド粒子水溶液のフォトクロミズム強度と粒子表面に吸着したPhe量との関係を定量的に評価できる方法を確立できたことで、今後WO3ナノコロイド粒子を用いたアミノ酸化合物比色センシング法に関する基礎データ収集が可能となった。
|
今後の研究の推進方策 |
WO3のフォトクロミズムは、アミノ基、カルボキシル基などの極性置換基を有する有機分子がWO3表面に吸着することで増強することが報告されているが、そのメカニズム、及び定量的理解は、未だ十分に得られていない。そこで次年度(平成25年度)は、WO3コロイド粒子表面へのPhe以外の種々アミノ酸吸着・会合挙動と表面増強フォトクロミズムとの関連を紫外可視吸光光度法、及び高速液体クロマトグラフィー法を用いて調査する。また、WO3ナノコロイド粒子とアミノ酸化合物との相互作用を直接評価すべく、ラマン、または赤外分光学手法による評価システムの構築を行なう。
|
次年度の研究費の使用計画 |
市販の全反射型分光アクセサリ(総額90万円)を購入し、適宜光学備品(20万円)を用いて改造を行ない、WO3ナノコロイド粒子とアミノ酸化合物との相互作用の直接的評価システムの構築を目指す。またWO3コロイド粒子合成に使用する試薬・ガラス器具として消耗品類(30万円)を計上する。
|