本年度(平成26年度)は、アミノ酸化合物表面吸着に伴う酸化タングステン(WO3)表面増強フォトクロミズムに関する基礎的研究を推進した。具体的実施内容と成果は以下の通り。 (1)粒径の揃ったWO3ナノコロイド粒子の合成技術の確立 半導体ナノ粒子は、フォトクロミズムをはじめとして光学特性が粒子径に大きく依存する(量子サイズ効果)。よって、サイズの揃ったWO3ナノコロイド粒子を作成は、アミノ酸を高感度にセンシングするうえで極めて重要である。前年度に確立したWO3ナノコロイド粒子の合成の最適化を進め、球状でモード径20 nm、メディアン径18 nmを有する三酸化タングステン2水和物(WO3・2H2O)ナノコロイド粒子の合成に成功した。 (2)アミノ酸吸着表面増強フォトクロミズムの定量的理解 WO3コロイド粒子表面へのアミノ酸吸着挙動と表面増強フォトクロミズムとの関係を評価すべく、前年度のL-フェニルアラニン(Phe)のほか天然α-アミノ酸20種類を用いた。親水性と疎水性のバランス、及び立体障害の影響でα-アミノ酸の吸着挙動は大きく変化し、表面増強フォトクロミズムの初期着色速度に違いが確認された。また、ラマン分光法による結果から、種々アミノ酸の吸着形態の違いが示唆された。この結果は、アミノ酸化合物の定性・定量分析を考慮するうえで極めて重要な知見である。
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