研究概要 |
本研究の目的は、抗原抗体反応によって生じる屈折率変化に対して高感度かつ顕著に反射スペクトル変化を示すフォトニック結晶構造を明らかにし、さらに高感度なフォトニック結晶バイオセンサーを開発することにある。本研究によって開発するバイオセンサーは、非標識(ラベルフリー)で抗原抗体反応を検出可能であることから、現在医療分野において広く用いられている診断・分析技術よりも簡便なバイオセンサーとなる結果が予想される。これは、被験者が医療機関に赴くことなく、自宅で疾病の診断が可能な技術となりうるため、医療診断・分析分野に大きく貢献できる点で意義がある。 当該年度は、前年度の実績より種々の形状(三角・四角・円)、サイズ(200~400 nm)、周期(三角配置・正方配置)を有するホールアレイ型フォトニック結晶の中で最も高い屈折率応答性を有する構造を用いて抗原抗体反応の検出を行った。 抗原抗体反応の検出には、直径300 nm, 正方配置のフォトニック結晶表面へ抗ヒトインスリン抗体を共有結合にて固定化した後、異なる濃度に調製したインスリン溶液を滴下・抗原抗体反応させた。抗原抗体反応後は、洗浄操作によって余剰のインスリンを除去・乾燥させ、反射スペクトル測定を行った。その結果、本研究で作製したフォトニック結晶は、健常者の血中インスリン濃度範囲を十分検出・定量可能であることが明らかとなった。 加えて、フォトニック結晶表面へ高屈折率材料を被覆させることで、更なる高感度化を実現することに成功した。
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