研究概要 |
イオン液体1-ブチル-3-メチルイミダゾリウムビストリフルオロメタンスルホニルイミド (BMITf2N)を調製した。これに、各種金属イオン(Co(II), Mn(II))6水和物のテトラフルオロホウ酸塩を加え、減圧下において加熱することにより溶解した。その結果、揮発した水分と思われる気体の発生が確認され、溶液は各種金属イオン6水和物の色(Co(II): ピンク色, Mn(II):無色)とは全く異なる呈色(Co(II): 赤紫色, Mn(II):褐色)を示した。各溶液の紫外可視吸収スペクトルを測定したところ、Co(II), Mn(II)イオン周囲の配位構造はそれぞれ6配位八面体型, 4配位四面体型であることが示唆された。また、カールフィッシャー水分計(購入備品)を用いて各溶液中の残存水分量を求めたところ、金属イオンに対する水分子のモル比が1以下であり、本研究の主目的の一つである金属イオンの脱水和がこの系で進行することが明らかになった。以上の結果から、Co(II)イオンは溶媒であるBMITf2NのTf2N-が有する酸素原子2個を介したキレート配位を計3個のTf2N-から受けており、[Co(Tf2N)3]-なる錯体を形成していると考えられる。一方、Mn(II)イオンに関しては、Tf2N-から同様のキレート配位を受けてはいるが、配位しているTf2N-の数は2個であり、Mn(Tf2N)2なる錯体を形成しているものと思われる。 更に、2個のアセチルアセトナト配位子(acac-)と2個の水分子を含むCo(II), Mn(II)の錯体、trans-M(acac)2(H2O)2 (M = Co, Mn)についてもBMITf2Nに溶解し、同様の検討を行った。その結果、どちらの金属錯体においても脱水和が進行し、M(acac)2なる四面体型錯体を形成することが示唆された。
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