本研究では、新規一次標準直接法の実現を長期目標としてキュリー・ワイスの法則に基づく新規定量分析法の原理を提案し、その原理の妥当性確認を試みた。試料が不対電子をもつ常磁性物質、または、常磁性物質と反磁性物質の混合物である場合、その試料に一定の磁場を印加しながら磁力計を用いて磁気モーメントの温度依存性を測定する事により、その常磁性物質を非破壊的に共存分析する。 前年度実施した高純度酸化ガドリニウム粉末、および、酸化ガドリニウム-酸化ケイ素混合粉末試料を用いた原理の妥当性確認では、各高純度原料粉末の秤量値から求めた酸化ガドリニウムの「調製濃度」、および、本磁気分析法による「分析濃度」間の差が、不確かさの範囲内で不一致であった。それに対して、最終年度では再度、同混合粉末試料の調製・測定を行い、詳細な不確かさ評価を行った。磁気モーメント対温度のデータに対する回帰分析において使用する非線形最小自乗法プログラムを改良することにより、分析値およびその不確かさの値がより正確になり、約5%の不確かさの範囲内で両濃度が一致した。また、その不確かさは、磁気モーメントの測定温度範囲の拡大、および、磁気モーメント測定値の再現性向上を試みる事によって改善できる見通しを得た。本妥当性確認における分析条件では、測定試料量は10~60 mgであり、検出可能な酸化ガドリニウムの最低濃度(質量分率)は0.008 kg/kgであった。その他、安定フリーラジカルをもつ3種類の高純度有機化合物粉末を用いた妥当性確認の測定・解析が進行中である。
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