当該研究課題に関して、平成26年度は最終年度として、これまでに構築した質量分析を用いた核酸の定量評価技術の対象範囲拡張と認証標準物質を用いたバリデーションの実施を行った。特に、前年度までに、高速液体クロマトグラフ(HPLC)を用いた高分子核酸の分離技術を検討したが、中でもサイズ排除クロマトグラフィ(SEC)カラムを用いた分離系に関して評価を進めた。対象物質としては、モデル物質としてきたオリゴDNAから実用性を踏まえて分子種をRNAに変更し、鎖長についても500塩基から1000塩基程度と大幅な拡張を検討した。これらの分子鎖に対してSECを用いて有効に分離できたほか、分離に用いる緩衝溶液のpHを弱アルカリ側に調整することによって、カラム担体へのRNA分子の吸着を抑え、安定した分離を実現することを見出した。また、この分離の際には、通常、分子吸着を抑制するために用いられる塩化ナトリウムなどの塩を添加しなくても吸着を抑えて安定に分離可能なカラムと分析条件を見出すことができた。この結果により、質量分析を用いた検出系においても良好に測定することができ、特に誘導結合プラズマ質量分析装置(ICP-MS)を用いた核酸分子内りん元素の質量分析を可能とした。SEC-ICP-MSにより、高分子のRNA分子を分離する系を確立したが、この手法の妥当性評価を行うために、RNA認証標準物質(NMIJ CRM6204-a)を用いた分析評価を行った。その結果、高分子性を保存した核酸分子においても安定して定量分析が可能であることが示され、本分析手法の有効性と実用性を示す結果となった。結果として本研究課題において、DNAとRNAの両分子を対象として、低分子から高分子までの範囲で高分子配列を有した試料を定量的に分析することを可能とした。
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