研究概要 |
水素化ジイソブチルアルミニウム (DIBAL-H)を反応剤とし、有機ケイ素基が置換した1,3-エンインとの反応により、反応系中で、ジエニルアルミニウム中間体を調製し、もう一分子の1,3-エンイン類を加えることで四置換ベンゼンを位置選択的に合成できることを見いだしているが、収率が低いという問題があった。そこで本反応の効率化を実現するべく検討を行った。 その結果、異なる構造を有する1,3-エンインを追加することにより、中程度ではあるが目的とする四置換ベンゼンを完全な位置選択制で合成できることがわかった。途中で加える1,3-エンインをケイ素置換アルキンにしても、低収率ながら対応する四置換ベンゼンを与えることがわかった。 また、上述の反応で得られた自己二量化体である o,o'-ビスシリルスチルベン誘導体の光物性について詳細な検討を行った。o,o'-ビスシリルスチルベン誘導体は、単離精製すると、白色の固体として得られることがわかった。また、本誘導体には2つのシリル基が存在するため、ヘキサンに非常に溶け易く精製や再結晶がし易いことがわかり、機能性材料として装置化する際に有利であることも明らかとなった。比較のため、2つのシリル基のうち、1つ及び2つのシリル基を切除した誘導体も調製し、これら3種類のスチルベン誘導体の光物性について精査した。試料として、ジクロロメタン溶液、粉体、単結晶の3サンプルを用意し、それらの励起スペクトル、蛍光発光スペクトル、蛍光量子収率、蛍光寿命を測定した。驚いたことに、これまで一般的に固体や結晶状態では、濃度消光といわれる現象のため、これらの状態では効率良く蛍光発光しない、あるいは全く光らないと報告されていたが、本研究で調製した試料は、いずれも溶液状態よりも、粉体のほうが、さらに結晶状態のほうが遥かに良く蛍光発光を示すことが明らかとなった。
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