π共役分子はその光学的性質を利用して様々な機能性有機材料へ応用されており,中でも分子内に適切な配位部位を組み込んだ分子は金属の配位によってその光学的性質が大きく変化しうるため,金属イオンに対するセンサーとしての用途が期待されている. 本研究では,アルキン含有キレート配位子の後周期遷移金属化合物に対する配位とその構造変化を機能性材料へと応用することを研究目的としている.平成24年度は,ロジウムやルテニウムなどにおいて,アルキンの π 配位を含むキレート錯体の合成およびこれらの錯体における構造変化の度合いの外部刺激に対する影響について詳細に研究した.一方,パラジウムや白金錯体の場合では,アルキン部位との相互作用を持たない錯体や,アルキンとの環化によりピンサー型錯体が形成されることも見いだされている.平成25年度は,金属の配位が配位子の光学的性質に与える影響を調べるため,対応するジアルキル白金(II) 錯体の合成を行った.その結果,キレート錯体を中間体としたアルキン炭素との環化による双性イオン型プラチナサイクルおよび,アルキン部位が配位していないキレート錯体の形成をそれぞれ確認し,各々の錯体が配位に伴って特異な光学応答を示すことも確認した.これらの成果は機能性有機材料に対して配位部位を適切に制御した新規材料の開発を目指す上での端緒となる結果であると言える.
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