研究課題
フラーレンやカーボンナノチューブに代表される閉じた三次元構造を持つ炭素ナノ分子は、歪んだπ共役系と環状構造に由来する、特徴ある電子的、光学的性質を有することから大きな注目を集めている。特に、近年の有機エレクトロニクス分野の発展に伴い、その炭素ナノ分子群は次世代材料の中核を成す物質群として、学術的な基礎研究にとどまらず産業界からも広く研究が展開されている。このような観点から、これまでに存在しない新しい構造、物性、機能を持った三次元炭素ナノ分子の創製研究の重要性はますます高くなっている。しかし、これら分子の入手は一般的に、触媒気相成長法注やアーク放電法注などの物理的手法によるため、得られる分子の構造が大きく限定されていた。今回、シクロパラフェニレン(CPP)の合成プロセスを発展させることで、従来法では達成困難なベンゼン環が三次元的につながった新しい三次元炭素ナノ分子の合成に成功した。すなわち、三つの反応点を持つベンゼン単位と白金錯体との組織化により、正八面体構造を持つ白金錯体が高収率で生成されることを明らかにするとともに、この錯体から白金を還元的脱離によって除去することにより、構造を任意に決定した三次元炭素ナノ分子を合成することに成功した。また、その分子の光物性や酸化還元特性、および、電荷移動度などの基礎物性の測定も行った結果、その分子を有機ELや有機半導体などに用いられている電荷移動材料などに利用できる可能性が示された。得られた構造体の構造は単結晶構造解析を用いて決定し、その分子はベンゼン環が三次元的につながった「ボール状」構造を持つことが分かった。
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