研究概要 |
直接的アリール化重合において高活性を示すパラジウム触媒の開発を目的として、以下の2点について検討を行った。 (1) 直接的アリール化反応に及ぼす補助配位子の電子的効果を調べた。具体的には、反応中間体のモデルである[Pd(Ar)(μ-OAc)(PAr’3)]4 (Ar =C6H3Me2-2,6, Ar’ = C6H4Y-4: Y = OMe (1a), H (1b), F (1c), CF3 (1d)) と2-メチルチオフェン (2; ThH) からThArが生じる反応について、速度論的手法とDFT計算を用いて解析した。反応速度は、配位子PAr’3の電子供与性の低下とともに向上した。この傾向はDFT計算を用いて再現可能であり、ホスフィン配位子の電子的効果は、1と2からC-H 結合切断を経て生成する [Pd(Ar)(Th)(PAr’3)(AcOH)] 中間体からの律速段階である還元的脱離反応に最も大きく影響を及ぼすことが分かった。 (2) 前年度に見出した配位子P(C6H4OMe-2)3 (L) を用いた直接的アリール化触媒が高活性を示す原因について調べた。具体的には、触媒中間体として想定される配位子Lを有する[Pd(Ar)(OAc)(L)] (4; Ar = Ph (4a), C6H3Me-2,6 (4b))を合成単離し、チオフェン2の直接的アリール化に対する反応性を速度論的手法により調べた。その結果、配位子Lの効果は、還元的脱離反応に最も大きく影響を及ぼし、その結果反応が進行しやすくなることが分かった。また、配位子Lを用いた触媒系はチオフェン類の重合に対して有効であることを併せて見出した。5-(2-ヘキシルデシル)‐5H‐チエノ[3,4-c]ピロール-4,6-ジオンと種々のジブロモアレーン類から対応するポリマーが得られ、その数平均分子量は、最大で68200に達した。
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