研究課題/領域番号 |
24750092
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
海老根 真琴 九州大学, 理学(系)研究科(研究院), 助教 (70545574)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 天然物化学 / 全合成 / 構造確認 / アンフィジノール3 |
研究概要 |
海洋渦鞭毛藻が生産する抗真菌物質アンフィジノール3は、新たな抗菌剤のシーズとして期待されているが、多くの不斉点が鎖状部分に存在しており、いくつかの不斉点同士が隔離されているなど、構造決定上多くの困難があった。抗菌活性の発現機構解明や新たな抗菌剤の創出に向け、まずは合成化学的にその立体構造を確認する必要があることから、申請者らはアンフィジノール3の全合成研究を開始した。これまでに複数のグループからアンフィジノール3の部分構造の合成例が報告されているが、未だに全合成は達成されていないことからも、全合成には困難が予想された。 平成24年度は、既に合成されていたテトラヒドロピラン化合物を2つの異なるテトラヒドロピランフラグメント(C31-C42部分およびC43-C52部分)へと誘導化し、両者の連結を試みた。鈴木―宮浦カップリングや根岸カップリング、野崎ー檜山ー岸反応など、さまざまな方法での連結を試みたが、最終的にはビニルリチウムをアルデヒドに付加させることで望む連結体を得ることができた。収率や立体選択性にはまだ改善の余地があるが、ひとまず得られた連結体をC52位がアルデヒドである化合物へと誘導し、C53-C67位に相当するスルホンフラグメントとのJulia-Kocienski反応を行ってC31-C67部分を合成した。合成した化合物の保護基をすべて除去し、合成品の構造確認および天然物との比較を現在行っているところである。 以上の結果についてはすでに複数の学会発表にて報告済である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
交付申請書では、平成24年度中にC1-C29部分およびC31-C52部分の合成を完了することを目標として掲げた。実際には、C31-C52部分の合成には成功したが、C1-C29部分の合成は完了しなかった。C1-C20部分およびC21-C29部分は合成できたが、それらの連結が実行できなかったためである。これらの鎖状フラグメントは不斉中心の立体制御とその確認を慎重に行う必要があり、予想以上に時間がかかってしまったものと思われる。また、当初予想していたよりも収率の低い工程がいくつも発生し、実際に得られる化合物の量が少ないためにたびたび原料に立ち戻らねばならないことがあったことなども、進捗の停滞の原因と考えている。
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今後の研究の推進方策 |
今後はC1-C20およびC21-C29部分をある程度の量合成し、取り急ぎC1-C29部分の合成を完了させることを最優先にして合成を行う予定である。その後合成を先に進めながら、適宜、収率の低い工程の改善策を検討していく。 C31-C52部分は、まず、その後の検討が滞らないように、共通となるテトラヒドロピランフラグメント、C31-C42フラグメント、C43-C52フラグメントをそれぞれグラム単位で合成しておき、連結したC31-C52部分も数百ミリグラム~グラム単位で合成しておくように実験を行う。C31-C52部分については、さらに6段階の変換を経てC30-C52部分に相当するヨードオレフィンへと誘導する。C1-C29部分の合成完了後、C30-C52部分との連結を行う。 全合成に向けて、C53-C67部分も合成しておく。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成24年度と同様、平成25年度も有機合成試薬やガラス器具等の消耗品費に経費の多くの部分を充当する予定である。また、平成24年度に得られた研究結果を国内外の学会で発表する予定があるため、学会参加費や旅費の支出は多少増えることが予想される。
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