膜作用型の抗真菌活性を有する海洋天然有機化合物アンフィジノール3(AM3)の構造確認を目指した合成研究を行い、C45位の構造確認(Journal of Natural Products誌に投稿、2012年受理)、C51位の構造改訂(Organic Letters誌に投稿、2013年受理)を行うとともに、最終的に全合成に必要な主要3フラグメントの合成を完了した。 鎖状ポリオールフラグメントであるC1-C29部分の合成では、極性の低いシリル系保護基を多数有するフラグメント特有の溶解性の問題や、長鎖フラグメントゆえの反応性の低下に起因する実験上の問題がいくつか露呈し、予想以上の時間を必要としたが、最終年度に合成法を確立することができた(The Journal of Organic Chemistry誌に投稿・受理)。分子中央部、2つの6員環エーテルを含むC30-C52フラグメントの合成経路は平成25年度中に確立していたが、何箇所か低収率の工程を含んでおり、その一部を改善することができた。ポリエン構造を有するC53-C67部分については、有機金属試薬のクロスカップリングにおける反応性の違いを利用した短段階かつ効率的な合成経路を新たに開拓した(学会発表済み、投稿準備中)。 分子中央部分とポリオール部分の連結反応(C29-C30間での鈴木―宮浦クロスカップリング)は、より小さなモデル化合物において既に成功している。現在、その時の最適条件をもとに実際の基質を用いて検討を重ねているところであり、この反応さえ乗り越えられれば、その後は既に確立した方法によりポリエン部分を導入し、保護基の除去を経てAM3の提出構造式の全合成ならびに全立体配置の確認ができるものと考えている。
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