研究概要 |
本研究ではHOMO-LUMOに留まらずポテンシャル構造全体を自在制御するいわゆる「ポテンシャルプログラミング」の概念を基盤として、分子内ポテンシャル構造の制御されたデンドリマー材料の開発と応用研究の展開を目的としている。特に本研究では新規なドナー-アクセプター構造を基本とする量子井戸型ポテンシャルを有するデンドリマーをポテンシャルプログラムされた新しい材料として提案し、その合成を行うと共に性質を明らかとすることを目指した。 カルバゾール(ドナー)を分岐骨格とし、ベンゾチアジアゾール(アクセプター)を配したデンドリマー構造の合成にはカルバゾール窒素のN-アリール化反応が鍵となる。本研究ではヨウ素化したベンゾチアゾールとカルバゾールのN-アリール化が150℃という高温を要するものの、ヨウ化銅とtrans-1,2-シクロヘキサンジアミンと塩基の存在下で進行することを見出した。この反応と保護基として選択したトシル基の脱保護を繰り返すことでデンドリマー合成に必要な合成ルートを確立した。紫外可視吸収スペクトル測定と蛍光測定より世代の上昇とともに共役長が伸びて吸収と発光が超波長シフトすることが明らかとなった。 他のドナー・アクセプター構造として構造制御されたカルバゾールデンドリマー(ドナー)を基盤としたフラーレン(アクセプター)との複合材料の開発も前年より行っている。C60、C70、C84フラーレンとの複合体形成がデンドリマーのコアである亜鉛ポルフィリンに対するピリジンの軸配位によってアロステリックに制御できることが明らかとなった。
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