本研究では、リビングラジカル重合により一次構造制御した機能性直鎖ポリマーを合成し、本ポリマーを分子内で会合または組織化して「一分子鎖折り畳みポリマー」を構築する。平成25年度では、特に一分子鎖折り畳みポリマーの機能化と星型ポリマーを用いた一分子折り畳み構造の構築へと展開した。 (1)疎水性・水素結合による一分子鎖折り畳み機能性ポリマー ルテニウム触媒により親水性ポリエチレングリコールメタクリレート(PEGMA)と疎水性・水素結合性ウレア基を持つメタクリレート(BPUMA)をリビングラジカル重合し、分子量と組成比を制御した両親媒性ランダムコポリマーを合成した(Mw/Mn = 1.2-1.4)。本ポリマーは、BPUMA組成比を40mol%以下に設定すると、水中にて疎水性水素結合により効率的に一分子鎖で折り畳まれ、疎水性相互作用のみ(昨年度開発)と比べ、さらにコンパクトな形態を形成した。また、水素結合によりハロゲン系溶媒中でもfolding構造をとり、種々の溶媒中で自在にfolding構造を形成する分子設計指針を確立できた。 (2)一分子鎖インプリント折り畳みポリマー:イオン性色素の認識 4級アンモニウム塩を色素認識部位として有する両親媒性ポリマーを合成した。本ポリマーにアニオン性色素を認識させ、水中にて一分子内で架橋後、色素を除去し、色素構造とサイズ、対応する認識基の位置を固定化・記憶したインプリントポリマーを合成した。本ポリマーは、対応する色素を効率的に認識・捕捉した。 (3)両親媒性星型ポリマーの折り畳みを利用したナノカプセルの構築 多官能性開始剤をもちいて枝数が精密に制御された両親媒性星型ポリマーを合成した。本ポリマーは、昨年度の両親媒性直鎖ポリマーと同様、水中で一分子にて折り畳み構造(分子内会合)を形成し、疎水性ナノ空間を有する新たなナノカプセルの創出に成功した。
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