研究課題/領域番号 |
24750107
|
研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
金澤 有紘 大阪大学, 理学(系)研究科(研究院), 助教 (50621322)
|
研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
|
キーワード | 高分子合成 / カチオン重合 / リビング重合 / 精密重合 / 開環重合 / ルイス酸触媒 / ビニルエーテル / オキシラン |
研究概要 |
本研究では,カチオン重合挙動に基づいて多様なルイス酸触媒の個性を知り,それを活かして立体規則性制御や異種モノマーからの共重合体合成などを可能とする新しい制御重合開始剤系を設計することを目的としている。今年度は主に,(1) スチレン類のカチオン重合における種々の金属塩化物ルイス酸触媒の個性の解明,(2) サレン配位子を用いたカチオン重合触媒設計,(3) オキシランの制御開環カチオン重合と,オキシランとビニル化合物の開環・ビニル付加同時カチオン共重合,を検討した。 (1)では,種々の金属塩化物ルイス酸触媒を用いてp-メトキシスチレンのカチオン重合を行ったところ,ZnCl2やSnCl4などの二,四塩化物では制御重合が進行したのに対し,AlCl3やGaCl3,NbCl5などの三,五塩化物では制御されず,ルイス酸の構造による違いが見られた。これは,生長炭素カチオンと共に生じる対アニオンの構造がルイス酸によって異なることに基づくと考えられる。 (2)では,種々の置換基を有するサレン配位子をZrCl4と系中で混合して錯体を形成し,これを触媒としてビニルエーテルのカチオン重合を検討した。適切な置換基・骨格を有する配位子を用いることで,重合はリビング的に進行することがわかった。 (3)では,1-メトキシ-2-メチルプロピレンオキシドの開環カチオン重合を,ルイス酸触媒としてGaCl3を用いて行ったところ,副反応を起こすことなくリビング的に進行したことがわかった。さらに,生成ポリマーは主鎖に規則的にアセタール構造を有するため,酸性条件下で低分子量体に選択的に加水分解された。一方,イソブチレンオキシドとアルキルビニルエーテルの開環・ビニル付加同時カチオン共重合の可能性を検討し,B(C6F5)3をルイス酸触媒として用いることで,両モノマー間の交差生長反応を伴った共重合が進行することを明らかにした。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初の目的として具体的に3つのテーマを掲げているが,実績欄に記載のようにいずれについても意義深い結果,知見が得られたことから,順調に進展していると考えている。
|
今後の研究の推進方策 |
今後も,多様なルイス酸の個性を活かした特異的なカチオン重合系の開発を目的とし,3つのテーマそれぞれについて研究を推進していく予定である。(1)については,24年度はp-メトキシスチレンの重合においてルイス酸の性質が与える効果について明らかとなったため,今後は重合性の異なるスチレン類としてp-メチルスチレンなどの重合におけるルイス酸の影響を詳細に検討していく。(2)については,配位子を適切に設計すればリビングカチオン重合触媒として働くことがわかったため,今後さらに配位子上の置換基などを綿密に設計することで,立体特異性リビング重合の可能性について検討を行っていく。また,24年度に主に検討したサレン配位子とは異なる骨格を有する配位子についても検討を行いたいと考えている。(3)については,重合が制御できることが明らかとなった1-メトキシ-2-メチルプロピレンオキシドをビニルエーテルと組み合わせ,開環・ビニル付加同時カチオン重合の可能性を検討する。また,他の開環重合性モノマーとして種々の置換基を有するオキシランとの共重合についても検討を行う。
|
次年度の研究費の使用計画 |
研究を遂行するにあたり必要に応じて研究費を執行したため,当初の予定額と執行額は異なったが,研究計画に変更は無く,前年度の研究費も含めて最初の計画通りに研究を進めていく予定である。
|