研究課題/領域番号 |
24750108
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
高坂 泰弘 大阪大学, 基礎工学研究科, 助教 (90609695)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 立体規則性ポリメタクリル酸メチル / アニオン重合 / 末端機能化ポリマー / 環状高分子 / ステレオコンプレックス / 重合停止剤 |
研究概要 |
立体規則性環状ポリメタクリル酸メチル (PMMA)を用いたステレオコンプレックスの形成を目指し,当該高分子の合成を試みた.まず,前駆体となる末端機能化立体規則性ポリメタクリル酸メチルの合成を試みた. 当初計画していたアリルリチウムによるメタクリル酸トリチル (TrMA) の立体特異的重合は,開始剤の安定性や生成ポリマーの溶解性が問題となり,制御が困難であることが明らかになった.そこで,ビニルマグネシウムクロリドを塩化リチウムで活性化したTurbo-Grignard試薬を開始剤とする重合を試みたが,開始剤の活性が低く,高分子を得るには至らなかった. TrMAを用いた極性溶媒中での重合における末端修飾困難であったことから,非極性溶媒中における,メタクリル酸メチル (MMA) の立体特異的重合に適用可能な機能性停止剤を開発し,末端修飾を行うことにした.ジクロロメタン中,リチウムエノラートを開始剤,リチウムトリメチルシラヌレート(Me3SiOLi)を助剤とするMMAのアニオン重合を-78℃で実施し,2-(ハロメチル)アクリル酸エステルを停止剤として加えると,定量的かつ迅速に停止反応が進行し,末端にC=C結合を有するイソタクチックポリマー (it-PMMA) が得られた.助剤を嵩高いアルミニウムフェノキシドに代えて重合を行うと,C=C結合を末端に有するシンジオタクチックポリマー (st-PMMA) が得られた.これらのC=C結合に,弱塩基を触媒とするチオールエン反応を施し,カルボキシル基や水酸基,アミノ基を修飾することに成功した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当該年度では,環構造を持つ立体規則性ポリメタクリル酸メチルを合成し,それらのステレオコンプレックス形成について考察する計画であった.当該ポリマーの合成には末端に反応性基を導入したポリメタクリル酸メチルの合成が必須である.当初計画していたアリルリチウムを用いた手法は,立体規則性が低い一般的なポリメタクリル酸メチルの合成には有効で,実際に本研究の予備実験でも成果を上げていた.しかしながら,この開始剤系は立体特異的な重合をするメタクリル酸トリチルの重合には単純に転用できないことが明らかになり,合成計画を根本から見直す必要が生じた. Turbo-Grignard試薬を開始剤とする重合にチャレンジするなど,新しい合成戦略を探っていた結果,研究の基礎となる材料の合成に計画以上の時間を要してしまい,研究計画に遅れを生じた. 最終的に,当該年度ではメタクリル酸メチルの立体特異的な重合系に,直接適用が可能な停止剤を初めて開発した.この進歩は非常に大きく,従来の計画では,メタクリル酸トリチルを重合し,生成したイソタクチックポリマーを加水分解,2段階のメチルエステル化を経てポリメタクリル酸メチルへ誘導した後,環化する予定であったが,重合,環化以外のプロセスを完全に省くことが可能になり,ポリマーの大量合成が可能になった.これらのプロセスの簡素化は研究の遅れを取り戻すに十分に値すると評価し,「(3)やや遅れている」に分類した.
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今後の研究の推進方策 |
メタクリル酸メチルの立体特異的なアニオン重合系に直接適用が可能な停止剤として,前年度に開発した2-(ハロメチル)アクリル酸エステルを使用し,これに既知の機能性開始剤を組み合わせた重合によって,両末端官能基化立体規則性ポリメタクリル酸メチルの合成を試みる.具体的には,N-ベンジル-N-トリメチルシリルリチウムアミド(アミノ基の導入が可能)を開始剤に使用した非対称ポリマーの合成や,2官能性開始剤を用いたテレケリックポリマーの合成を実施し,立体規則性環状ポリメタクリル酸メチルの合成を行う. 環状ポリマー以外の材料は既に合成済み,あるいは合成がいつでも可能な状態にある.環状ポリマーが得られ次第,NMRによるステレオコンプレックス形成挙動を中心とした特性解析に移行する.
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次年度の研究費の使用計画 |
試薬類,実験器具類に使用する.
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