本研究は「親水性光電荷分離ゲルによる水系色素増感太陽電池の創製」と題し、高い電子輸送性・保持性を持つn型高分子ゲルが、TiO2に代わる画期的な新材料に成り得るとの着想のもと、高変換効率かつ環境適合した斬新な水系色素増感太陽電池の開発を目的とした。以下の4つフェーズで研究を進め、ゲル層中における電荷分離・電子輸送性を明らかにした。 ①高い電荷分離能および長い電子寿命を持つ新規nゲルの開発:有機n型分子であるビオロゲンおよび色素分子のポルフィリン、インドリンを用いて、計算化学的手法に加え、光学的手法として蛍光消光実験や蛍光寿命測定により評価した。また、ビオロゲンにおいて電解重合可能な多分岐型ポリビオロゲンを新規に合成、ゲル内における電子移動に関するパラメータを取り纏めることで体系化した。②共有結合で結合したn型分子/色素連結分子の合成とゲル化:色素とn型分子が連結した系で遷移確率の高いインドリン系色素/ビオロゲンの連結分子を、電解重合法を用いて初めて合成した。電子移動速度定数は非連結系に比べ10倍以上大きくなり10^10オーダーとなった。これまで合成したD131誘導体に加え、より長波長に吸収を有するD205誘導体を合成し、両者を電解共重合することで吸収帯を拡げることを可能にした。③反応速度定数の高い水溶性メディエータの探索および最適化:多分岐型ポリビオロゲンやインドリン系色素/ビオロゲンの連結分子を用い、親水性メディエータを含んだ電解水溶液を媒体とするセルを作成し、光電変換特性を評価した。また、Poly(TEMPO)において900 mVの高い開放電圧を示す結果となった。④反応場の増大に向けた多孔質透明電極の作製:透明酸化物の針状粉末を用いて焼結により集電体上に膜厚1μmの導電被膜をクラック少なく作成した。本電極を用いることで短絡電流が平板電極に比べ30倍程度に大きくなった。
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