研究概要 |
有機薄膜太陽電池に用いる新規ドナー性ポリマーを合成するため、ポリスピロオルトカーボナートの合成を行った。昨年度に引き続き、さらに溶解性が高く、分子量の大きなポリスピロオルトカーボナートの合成を目的として、主鎖骨格構造の検討を行った。昨年度の研究成果から、主鎖骨格が直線状のポリスピロオルトカーボナートに比べ、主鎖骨格にカルド構造を導入したポリスピロオルトカーボナートの溶解性が高いことから、今年度は主鎖に様々なカルド構造を導入することでポリスピロオルトカーボナートの分子量および溶解性の向上を試みた。カルド構造を有するモノマーとして、昨年度のフルオレン構造に加え、今年度はスピロビスインダン構造およびスピロビスクロマン構造の導入を試みた。これらの構造をもつ二官能カテコールと2,2,6,6-テトラクロロベンゾ[1,2-d4,5-d’]ビス[1,3]ベンゾジオキソールをクロロベンゼン中で130 °C、12時間加熱することによって重合を行った。反応終了後、メタノールに再沈殿することで、白色粉末のポリスピロオルトカーボナートをそれぞれ高収率で得た。得られたポリマーの赤外分光スペクトルからスピロオルトカーボナートに由来する1100cm-1の吸収が見られ、重合の進行を確認した。ポリマーの熱物性をDSC、TGAを用いて測定したところ、全てのポリマーにおいて50~300 °Cにはガラス転移点は観察されず、10%重量減少温度は400 °C以上で極めて高い熱安定性を示すことがわかった。スピロビスインダン構造を有するポリマーは溶媒に不溶であったが、スピロビスクロマン構造を有するポリマーは有機溶媒に可溶であり、フルオレン構造を有するポリマーに比べて分子量が高く、スピンコートなどで成膜することが可能であった。本年度の研究により、溶媒に可溶な高分子量の新規ポリスピロオルトカーボナートの合成ができた。
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