研究概要 |
本研究の基盤となる有機薄膜太陽電池用材料として、カルバゾール骨格を有するPCDTBTを合成した。通常は、より高い光電変換効率を目指すために、高分子量体を得ることが目的とされてきたが、今回はFriedel-Craftsアシル化反応が可能なある程度溶解性の高い高分子を新たに合成し、その光電変換特性と化学修飾について検討した。 高分子中のカルバゾールに化学修飾する前段階として、類似骨格を有するカルバゾール誘導体を別途合成し、検討した。本研究では、カルバゾールの3,6位への化学修飾を計画したが、その隣の2,7位に電子供与基が導入された誘導体に対する検討例は、知られていなかった。2012年度は、モデル物質およびカルバゾール系共重合体への3,6位への化学修飾条件の検討を中心に検討した。 求電子反応によるカルバゾール骨格のフッ素化反応については、モデル物質に対し、文献等に報告されている反応条件を検討したが、フッ素化は確認できなかった。今後、反応条件の最適化が必要である。 また、2,7位に電子供与基が導入された新規カルバゾール誘導体を合成し、3,6位へのアシル化反応を試みた。電子供与基であるチオエーテル基を2,7位に導入した誘導体を合成し、アシル化反応による3,6位への化学修飾を試みた。その結果、反応条件の検討により、目的とする修飾体を高収率で得ることに成功した。この反応を利用することで、当初予定になかった新規有機薄膜太陽電池用材料を得ることが出来た。 この検討により得られた知見を活用して、カルバゾール系共重合体へのアシル化反応を試みた。NMR測定より3,6位への化学修飾が確認できたが、その導入率は低く、反応条件の改善が必要となった。そこで、新たにカルバゾール系共重合体に類似の新しいモデル物質を合成し、反応条件を検討した。その結果、高い導入率を得られる反応条件を見出すことに成功した。
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