研究概要 |
2012年度はカルバゾールを主鎖に有する共役高分子の3,6位への化学修飾を目的として、モデル物質として2,7位に電子供与基が導入された新規カルバゾール誘導体を合成し、3,6位へのFriedel-Craftsアシル化反応が効率的に進行する反応条件を見出した。 2013年度はこの新たな反応条件のもと、カルバゾール骨格を有する有機薄膜太陽電池用材料として知られているPCDTBTに対してFriedel-Craftsアシル化反応を試みた。その結果、PCDTBTへのアシル基の導入率は2012年度と比較して向上した。しかし、その導入率は依然として満足いくものではなく、かつ、狙い通りの電子状態の変化は小さい結果となった。 そこで、上記の検討と並行して新たに電子状態の制御に焦点を絞り、新たな反応・ビルディングブロックの探索に着手した。これまでに、カルボニルとアニリン誘導体との脱水縮合反応によるイミン骨格形成反応において、反応が高収率で進行することを既に見出している。また、未反応でカルボニル基が残存しても有機薄膜太陽電池特性には影響を与えないことは種々のカルボニル基を有するπ共役高分子について実証されている。すなわち、これは研究当初に予定していた研究目的に合致した反応であると判断し、新たにカルボニル基を有する色素分子(キナクリドン)を主鎖に有するπ共役高分子を合成した。得られた高分子とアニリン誘導体を反応させることにより高収率で目的とするイミン化π共役高分子が得られ、目的とするπ共役高分子への直接化学修飾に成功した。さらに、高分子の主鎖への化学修飾であるため、光吸収特性も大きく変化し、電子状態の化学修飾による制御も同時に達成した。
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