研究課題/領域番号 |
24750116
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研究機関 | 防衛大学校(総合教育学群、人文社会科学群、応用科学群、電気情報学群及びシステム工 |
研究代表者 |
林 正太郎 防衛大学校(総合教育学群、人文社会科学群、応用科学群、電気情報学群及びシステム工, その他部局等, 助教 (00532954)
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キーワード | 共役系高分子 / 高分子反応 / 直接的アリール化 / クロスカップリング |
研究概要 |
共役系高分子主鎖の合成法の開発として、高選択的な直接的アリール化重縮合の開発を行った。特に、側鎖導入が可能となる3(及び4)位無置換のチオフェンをモノマーとし、パラジウム炭素をパラジウム触媒として用いた直接的アリール化重縮合をピバル酸カリウム存在下で行うことで、きわめて低副反応な直接的アリール化重縮合が達成できた。これにより、HT率が98%のポリ(3-ヘキシルチオフェン)の合成が迅速に行えた。更にチオフェンまたはビチオフェンと2,7-ジブロモ-9,9-ジオクチルフルオレンの直接的アリール化においてもリーズナブルな交互共重合体が得られた。今後、より多くの主鎖構造構築に向けて様々なチオフェンモノマーを用いた直接的アリール化を検討する予定である。 HT率98%のポリ(3-ヘキシルチオフェン)の側鎖をN-ブロモスクシンイミドで臭素化することにより、4位に選択的にブロミドを導入できた。これにNi(COD)2と2-3座のリン配位子を導入することで、ニッケル開始剤を側鎖に有するポリ(3-ヘキシルチオフェン)の合成を行った。得られたマクロ開始剤は有機溶媒に不溶であったが、これに対しグリニャールメタセシス用モノマーを添加したところ、マクロ開始剤が溶解せず、全共役グラフト共重合体を得ることはできなかった。そこで、臭素化したポリ(3-ヘキシルチオフェン)に対してStilleカップリングと臭素化を交互に行ったところ、3-4量体程度のオリゴチオフェンユニットの導入が行えたことによりオリゴチオフェン鎖を側鎖に持つ全共役系高分子の合成を達成した。 臭素化ポリ(3-ヘキシルチオフェン)とアリールボロン酸の高分子反応において4-ピリジニルユニットを側鎖に導入した。これに金属を配位させることによって、吸収-発光特性の改質を行った。今後、配位情報や光学特性、電気化学物性の詳細を調べていく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
共役系高分子主鎖の構築法、すなわち重合法において新しい知見が得られた。当初は従来法として知られるグリニャールメタセシスを用いた共役系高分子の合成を行う予定であり、実際に行ってきたが、ここに新しい重合方法による共役系高分子合成法を開発することでより容易なポリチオフェン合成を達成している。この方法として導入・開発したPd/C直接的アリール化重縮合は非常に高い反応性と重合効率を有していることから、新たなポリチオフェン合成手法として報告できるものと期待される。したがって、当初予定していた以上の成果が得られているものといえる。 共役系高分子側鎖に芳香族ユニットの導入が行えたが、これをマクロ開始剤とした全共役グラフト共重合体の合成は行えなかった。しかしながら、多段階的なカップリング反応により共役オリゴマーの側鎖導入によるグラフト共重合体の合成に成功したことから、この新規チオフェンオリゴマーグラフトポリチオフェンの物性解析を進めることが可能になるといえる。 また、側鎖臭素化ポリ(3-ヘキシルチオフェン)とアリールボロン酸の高分子反応において4-ピリジニルユニットを側鎖に導入することでルイス塩基性共役系高分子とすることでセンサーや光物性のチューニングが行えることも示唆された。他にも、この研究の流れから派生した共役系高分子合成と物性改質でいくつかの成果が得られている。
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今後の研究の推進方策 |
今後、これまで得られた共役系高分子の物性解析を行い、分岐構造に由来する構造について調査する。 更に、直接的アリール化重縮合法を発展させ、より多くの高分子主鎖構造を構築する予定である。特にチオフェンのみならず、セレノフェンやテルロフェンを主鎖に導入する手法の開発にも着手する。得られた高分子に関しては側鎖の臭素化、クロスカップリングにより、機能化、そして分岐構造の構築を目指す。 当初の計画にはなかったが、分岐状の全共役系高分子から更に発展させ、ハイパーブランチやネットワーク上のπ共役系高分子の合成にもチャレンジする。得られた分岐構造体はガス吸着挙動など、直鎖構造では高い性能向上が見込めないような物性分野へ展開する予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
前年度中に購入要求した残額分の薬品類が予定通りに行われなかったため 25年度に行った購入要求分は26年度に購入要求が決済された。
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