研究課題/領域番号 |
24750117
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研究機関 | 北里大学 |
研究代表者 |
内田 太郎 北里大学, 薬学部, 助教 (70581643)
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キーワード | 電極触媒 / 機能性表面 / 表面増強赤外分光 / 第一原理分子動力学計算 |
研究概要 |
本年度は、Ag吸着4,4'-ビピリジン(BiPy)をモデルにした還元電極触媒の第一原理分子動力学計算のみならず、高活性な酸化触媒および生体分子触媒の開発を目標に、まずはそれぞれの既知化合物の反応を機構を明らかにするため、in situ SEIRA測定ならびに計算シミュレーションをおこない、反応機構を明らかにした。 (1)酸化触媒では、有機化合物を燃料とする燃料電池アノード触媒表面で起こる反応を理解するうえで最も基本的な、Pt電極上でのギ酸酸化反応を検討した。電気化学ならびにSEIRAS、計算シミュレーションを併用し、反応のpH依存性を詳細に検討したところ、HCOOadsは中間体になりうるが、その寄与はとても小さく、pHによらず、ギ酸イオンが主に反応していることを明らかにした。これまで、この反応に関して多くの議論がなされていたが、結論が出なかったが、それは、強酸電解液中ではギ酸分子が反応するということを前提としていたためであり、強酸性中でも、実際にはプロトンを解離したのちに反応するという新しい反応機構が明らかにした。 (2)生体分子触媒の反応を電気化学的条件下で計測するには、電極と分子の間にアルカンチオール脂質二分子膜のスペーサーを入れる必要がある。とりわけ、膜蛋白のような分子を取り扱うには、脂質二分子膜内に膜蛋白を取り入れ測定をおこなう必要がある。これまで、電極上の脂質二分子膜の構造は、脂質分子同士の相互作用、脂質分子-金属の相互作用、二分子膜界面および内部の水の構造に依存することが指摘されているが、これまで膜界面および膜内での水の構造はこれまで明らかではなかった。そこで、SEIRASと電気化学測定を同時に行い、膜界面および膜内の水の構造変化をはじめて明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Ag電極に吸着したBiPyによる水分解の第一原理分子動力学計算が本年度中に終了しなかったため、計算化学的なアプローチでは進展が遅れている。しかし、概要でも述べたように、他の系に対して、実験化学ならびに計算的アプローチで反応機構等が明らかにできたこと、また、これ以外に、創薬の手法からin silicoによる分子設計法を学び、それについて成果が出つつあることを勘案し、おおむね順調に進展しているとした。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度である来年前半で、BiPyによる水分解促進の第一原理分子動力学計算を終わらせ、さらに、他分子についても同様の計算を行う。これらから得られる知見をもとに、さらに活性があると予測されるin silicoによる分子設計をおこない、その分子を実際に合成、もしくは類似化合物を得て、実際に実験をおこない、本研究手法で提示した、実験・計算による、高効率な触媒活性化プロセスの妥当性を検討する予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
国際学会参加予定が、急遽参加できなくなったため、その分の出張旅費を繰り越すこととなった。 そのまま旅費として繰り越し、学会に参加し、研究成果を発表する予定である。
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