電極触媒反応を効率的にし、その上に測定法の適用範囲を広げるために, 1 ) 表面増強赤外分光法による表面吸着種ならびに溶存種の同時検出法の開発ならびに 2)酵素電極反応の分子レベルでの検討を行った。さらに、反応機構や電子状態に基づく分子設計手法を確立するために、3)ケモインフォマティックス的手法を用いた検討を行った。 1) 表面増強赤外分先による表面吸着種ならびに溶存種の同時検出では、偏光を用いることで、in situで表面吸着種と溶存種を区別して測定できることを明らかにした。具体的には、これまでPt電極上のメタノール酸化反応では、表面に吸着した反応中間体の二酸化炭素やフォルメート種は表面増強赤外分光を用いて分光学的に検出することが可能であったが、生成物の二酸化炭素の検出をすることは不可能であった。ところが、偏光等を組み合わせることによって、生成する二酸化炭素も同時に検出することが可能となった。 2) 触媒反応のターゲットを酵素電極反応へ拡大するために、モデル触媒として、電子伝達系Iを用い、実際にAu電極に固定し、SEIRAS測定と同時測定を行った。その結果、電位により電子伝達を模倣でき、その電子伝達により引き起こされるタンパク質の構造変化を追跡することが明らかとなった。 3) 実験化学・計算化学で得られた結果を用いて効率的に分子設計をおこなう手段を確立するために、Dipeptidyl Peptidase-4阻害剤をモデルとしてケモインフォマティックス的手法を用いて行った。その結果、阻害剤の構造、電子状態他、物理化学的諸量をもとに、判別関数作成、三次元構造活性相関、PLS解析等を多段階に用いることで効率よく分子設計が行うことがきることを見いだした。
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