研究概要 |
本研究では、Alq3, C60, およびペンタセン(pentacene)等の有機物質と3d遷移金属との接合における電界印加磁気異方性を研究する.目的は次のとおりである.1.どのような有機物質と金属との組み合わせが最も大きな垂直磁気異方性が誘導されるかを明らかにする.誘導される磁気異方性が1 Merg/ccのオーダーとなる組み合わせをひとつの目標とする.2.垂直磁気異方性の原因を考察するとともに,このような接合が将来的に実用デバイスとして実現可能か否かをトンネル接合を作製して検討する. 本年度は,磁性体にCoを用いた素子を作製し,研究を進めた.作製した素子の構成は,Si/SiO2/Pt(10)/Co/C60/ITOないしSi/SiO2/Pt(10)/Co/C60/SiO2/Pt(膜厚の単位はnm)である.いくつかの厚みのC60層において,Co層の厚みを面内磁化から垂直磁化に変化するように系統的に変化させた素子を作製した.素子は電圧を印加しながら極カーループによって評価した.いくつかの素子において電圧に対する微弱な変化が観測されており,詳細な研究を進めている. 加えて,マグネタイトとC60層の接合素子を作製し,磁気伝導特性を調べたところ,C60層の厚みが80 nm程度でも室温で磁気抵抗を観測することに成功した.この成果は高インパクトファクタの雑誌に掲載された.比較的長い距離にわたって電子スピン情報が失われずにC60層を輸送されると考えられるが詳細を検討している.
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