研究課題/領域番号 |
24750121
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
中谷 昌史 東北大学, 多元物質科学研究所, 助教 (80451681)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 磁性ナノ粒子 / ナノコンポジット磁石 / 単磁区 / コアシェル / 粒径制御 |
研究概要 |
24年度は出発物質となる酸化鉄ナノ粒子の合成ならびにその粒径・構造制御を行った。また、本研究ではコア:α-Fe、シェル:ε-Fe2O3の構造を有するナノコンポジットナノ粒子調製を目的としているため、得られた酸化鉄ナノ粒子を用いて、還元-部分酸化を行い、α-Feナノ粒子表面が酸化されたコアシェル粒子の調製とその酸化層厚制御ならびに安定性について検討した。出発物質となる酸化鉄ナノ粒子の粒径に関しては、ソフト相-ハード相の2層で構成された際、両層が単磁区臨界粒径の30nm以上にするため、また全体積ならびにソフト/ハード比の最適化を行うため、50 nm~160 nmの範囲で制御した。加えて、酸化鉄ナノ粒子も一般的に調製されるFe3O4、Fe2O3では30nm以上では自発磁化から凝集が生じるため、その結晶構造を常磁性を示すウスタイト:FeO相になるように制御した(submitted)。具体的には、粒子成長促進のため、一般的な高沸点有機溶媒を用いずに、保護配位子であるオレイルアミン-オレイン酸中に鉄の前駆体を溶かし、突沸を防ぐため、80~160 °Cで減圧処理後、280~320 °Cで反応させることで粒子を得た。得られた粒子は立方体状の形状を有し、その構造はFeOであることが確認された。また磁気特性は常磁性であり、溶液中で安定に存在することが確認された。これと同時に、表面のみ酸化されたFeナノ粒子の調製を行った。本研究の目的であるソフト相コア-ハード相シェル構造を構築するため、α-Feナノ粒子表面に酸化鉄層を形成させる必要がある。そこで、調製した酸化鉄ナノ粒子をシリカ被覆し、水素ガス雰囲気下で還元処理後、大気下へ暴露すること無く低濃度酸素下において酸化処理を行った。処理温度を変化させることで、酸化鉄層厚を制御できる事が確認された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
24年度はα-Fe/FexOyコアシェルナノ粒子のコア/シェル比精密制御を目的としていた。そこでコアシェルナノ粒子を調製するため、8 nm Fe3O4ナノ粒子を用い、シリカ被覆後、還元処理を施し、大気下に暴露すること無く低濃度酸素下において処理することで、α-Feナノ粒子の表面を酸化することに成功した(制御 ~1.5nm)。得られたα-Fe/Fe3O4ナノ粒子は80日後においても内部の金属鉄相がその状態を維持できることが確認された。このことから、結晶性が高い酸化鉄相に覆われたα-Feナノ粒子の調製には成功したものと言える。続いて、シェル部の酸化鉄相をε相へ変態させる条件を検討するため、先ずはFe3O4ナノ粒子を用いてε相形成条件を検討した。前述の8nmFe3O4ナノ粒子をシリカ被覆し、大気下、900 ~ 1200℃、2 ~ 200 h加熱処理を行った。1200°Cで200hの処理を行ったサンプルでは、ε相と同時に、α相も形成された。これは温度が高すぎたためと考えられるが、保磁力が室温で13.1kOeと非常に高く、ε単相化により更なる高保磁力が期待される。加えて、粒径を大きくした際により安定な材料を得られると期待される。以上より、ε相形成の条件について知見を得ることに成功した。これらと同時に、次年度に予定していた粒径制御を24年度に行った。これは、前述のα-Feナノ粒子表面酸化処理を8 nm Fe3O4ナノ粒子で行ったが、確認が難しく、また実際には大粒径でないと室温での性能が期待できない。そこで、計画を繰り上げ、粒径制御を行った。粒径増大のため、配位子中での調製とし、事前に減圧処理を施した。これにより55~160nmのFeOナノ粒子を得た。形は立方体状であり、異方性制御に期待が出来る。このことから、粒径・形状制御に成功したものと言える。
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今後の研究の推進方策 |
まず、24年度にε相形成ができたもののα相が混ざってしまったため、ε相単相形成条件を確立する。単相形成のため、処理温度の低減、処理時間の制御に加え、今回明らかになったこととしてシリカ層の厚さが結晶構造変態に影響することが確認されたため、その厚さの最適化を行う。また、条件が最適化された後、55nm以上のFeOナノ粒子を用いて調製を試み、粒径による影響について詳細に検討する。続いて、55nm以上の粒径を有するFeOナノ粒子を用い、表面酸化処理されたα-Feナノ粒子を調製した後、上述で得られたε相形成条件を用いて酸化層をε相へ構造変態させる。この際、粒径と酸化皮膜厚を制御し、様々な組合せのナノコンポジット磁石ナノ粒子を調製する。得られたナノコンポジット磁石ナノ粒子の磁気特性を粒径、異なるコアシェル比毎にSQUIDにより測定し、磁石性能を表す最大エネルギー積 (BH)maxが最大となる材料調製条件を見つけ出す。また得られたナノコンポジット磁石ナノ粒子の磁気特性を詳細に評価し、スプリングバック現象の確認、異方性の確認などを行う予定である。加えて、実際の利用で重要となる熱的安定性の評価について詳細に行う。調製においては、シリカ被覆しているが、実用化のためにはシリカ層を取り除く必要がある。そこで、高pH下、配位子存在下で粒子を安定に取り除く手法についても検討を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度使用額は、今年度の研究を効率的に推進したことに伴い発生した未使用額であり、平成25年度請求額とあわせ、平成25年度の研究遂行に使用する予定である。
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