研究課題/領域番号 |
24750121
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
中谷 昌史 東北大学, 多元物質科学研究所, 助教 (80451681)
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キーワード | 磁性ナノ粒子 / ナノコンポジット磁石 / 単磁区 / コアシェル / 粒径制御 |
研究概要 |
平成25年度は、出発物質となる酸化鉄ナノ粒子の合成、その粒径制御、シリカ被覆、ならびに構造制御について行った。出発物質である酸化鉄ナノ粒子の合成については、室温常磁性であるウスタイト相を有し、粒径が80nmの大粒径サイズの粒子を調製することに成功した。これは、超常磁性サイズよりも大きいため、α相形成時に大きな飽和磁化を発現出来るものと期待される。また、この大粒径粒子へシリカ被覆することに成功し、その厚さを制御し、温度に対する耐性について詳細な検討を行い、最適厚さの条件を見いだした。 本研究において、軟磁性α-Fe相をコアに、硬磁性相ε相酸化鉄をシェルに採用することを想定している。そのため、酸化鉄相に覆われたα-Feナノ粒子の調製ならびにε相担体で調製出来る手法について度検討した。まず、前年度成功している酸化鉄被覆α-Feナノ粒子調製法を、上述の大粒径酸化鉄ナノ粒子をシリカ被覆し、還元・酸化処理を行うことで小粒径時と同様の耐酸化性能を付与することに成功した。つづいて、ε相形成について検証するため、まずは8 nm 酸化鉄ナノ粒子をシリカ被覆したものを出発物質として用い、ε相形成条件について検討した。シリカ厚を制御されたシリカ被覆酸化鉄ナノ粒子を様々な処理温度、昇温速度、処理時間の下で処理を行い、結晶構造変態を追跡した。現在、単相では無いものの、ε相形成に成功しており、その保磁力を室温で13kOeまで向上させることに成功している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現在、出発物質である酸化鉄ナノ粒子の粒径制御について、前年度まで調製に成功した酸化鉄ナノ粒子調製方法を基に、5~200nmで制御することに成功しており、その結晶構造についての制御も成功している。また、コア部のα-Fe相の表面に酸化鉄相を形成させることに成功しており、その耐酸化性能が非常に長期間維持されることを確認した。加えて、酸化鉄の1種である高保磁力酸化物相であるε相の形成に、一部他相が混入しているものの、成功している。以上の結果から、おおむね順調に進展しているものと判断した。
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今後の研究の推進方策 |
コアにα-Fe相、シェルに酸化鉄相を有するコアシェルナノ粒子について、粒径を変えながらそのコアシェル比を大きく制御出来る技術確立を行う。また、ε相形成が単相では無く、他の相との混相になっているため、ε単相で調製出来る手法確立をまず行う。このとき、処理温度・時間、昇温速度、シリカ層厚が大きく構造変態に影響を与えることが確認されているため、それらの制御を厳密に行い、構造変態に与える要因について詳細に検討する。その後、酸化鉄被覆α-Feナノ粒子の酸化鉄層をε相へ構造変態させ、ナノコンポジット磁石ナノ粒子の調製法確立につなげる。
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