研究課題
「磁性」だけでは説明できない分子性超伝導体の発現機構を探るため、「電荷揺らぎ」との共存を検証する実験を行なった。振動分光を、[Pd(dmit)2]2塩・κ-型BEDT-TTF塩・β-型BEDT-TTF塩に適用し、電荷揺らぎの様式を観測した。昨年度までの研究により、弱圧超伝導体の単斜晶EtMe3P[Pd(dmit)2]2とスピン液体のβ'-EtMe3Sb[Pd(dmit)2]2にて、電荷揺らぎを示唆する結果を得た。今年度は、揺らぎの原因解明のため、同型結晶のβ'-Et2Me2Sb[Pd(dmit)2]2とβ'-Cs[Pd(dmit)2]2の電荷整列状態の起源を再検討した。その結果、上述の物質群は、「4量体」・「4量体と8量体の競合」・「8量体」という連続的線上に属することを突き止めた。次に、低温で反強磁性になるβ'-Et2Me2As[Pd(dmit)2]2とβ'-Et2Me2P[Pd(dmit)2]2も調べた。その結果、[Pd(dmit)2]2塩の電荷揺らぎは、2量体・4量体・8量体という3つの尺度から分類できた。つまり、β″-型BEDT-TTF塩と同じく、電荷の揺らぐ分子数と基底状態には相関がある。また、三角格子からのズレという尺度は万能ではないことも分った。更に面白いことに、2量体・4量体・8量体、および、これらの競合状態は、共に分子軌道準位の逆転による安定化を満たしている。これは、[Pd(dmit)2]2塩には軌道に関する自由度が存在することを意味する。ようやく系統的な議論が出来るようになったので、現在、複数の論文を作成中である。κ-(BEDT-TTF)2Cu[N(CN)2]Iodineの研究も継続して行い、常圧で超伝導を示す試料も見出した。β″-(BEDT-TTF)4Pt(CN)4H2Oの一軸圧縮下電気抵抗率測定も行った。
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J. Phys. Soc. Jpn.
巻: 83 ページ: 0537031-0537035
http://dx.doi.org/10.7566/JPSJ.83.053703