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2012 年度 実施状況報告書

巨大金属酸化物クラスターのテンプレート合成

研究課題

研究課題/領域番号 24750129
研究種目

若手研究(B)

研究機関山口大学

研究代表者

綱島 亮  山口大学, 理工学研究科, 助教 (70466431)

研究期間 (年度) 2012-04-01 – 2015-03-31
キーワードポリオキソメタレート
研究概要

分子性金属酸化物あるポリ酸についてテンプレート合成法の確立を目標に、本提案はクラスター形成におけるテンプレート効果の実証、までを目指した。これにより形状や構造の設計を可能にし、暁に、分子スケールを凌駕したナノ構造体や機能性有機分子をテンプレートとした複合ナノ材料の構築が可能になる。従来の結晶化が全ての律速となる合成プロトコルでは達成困難であるが、申請者はこれまで進めてきたゲル電気泳を用いる事で解決可能になる。つまり、ゲル電気泳動によるクロマトグラフィー分析を利用すれば、合成条件の最適化や純度の評価、など、反応生成物の直接評価が可能になる。
巨大リング状クラスターMo154はモリブデン酸イオンに酸と還元剤(Na2S2O4)を反応させ得られる。今回、反応pHや還元剤量を変えながら、反応溶液をゲル電気泳動によりクロマトグラフィー評価した。既知のMo154反応の条件では、確かに単一の電気泳動バンドが観察され、Mo154のみが生成物であることを確認した。しかし、他の条件では複数の電気泳動バンドが見られ、Mo154以外にも様々なクラスターが形成していることが明らかになった。テトラアルキルアンモニウムの側鎖長を1から5に順序変えながらカチオン交換を行い、反応混合液中のクラスターを単離、再結晶の後単結晶X線構造解析から構造を決定した。反応pHや還元剤量が増えるにしたがって[(SO3)2Mo18O54](4-)、[(SO3)4Mo6O15](16-)が形成していることを突き止めた。両クラスターとも、還元剤の酸化により生じるSO3(2-)イオンをクラスターの中心に含み、pHや還元剤量の増加によりSO3(2-)がテンプレートとなったためと考えられる。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

1: 当初の計画以上に進展している

理由

Mo154形成反応をモデルとし、反応pHや還元剤量によって生成物がMo154から変わることを明らかにできた。電気泳動を用いない限り、吸収スペクトルが類似な還元体ポリ酸を識別することは困難で、混合溶液か否かですら解りにくい。今回、反応条件を系統的に変え、その際に得られる化合物や副生成物の構造決定まで可能になった。この点は、当初の予定以上であった。電気泳動移動度の差はポリ酸の極性に比例し、このわずかな極性の差(水溶性である点でほとんど極性に差はない)を対カチオンとしてのテトラアルキルアンモニウムの極性の差(アルキル鎖長で制御)により拡大することで、個々の成分を混合溶液から単離することに成功した。具体的には、移動度の低いクラスターほど、極性の高いテトラメチルアンモニウムで沈殿しやすい。移動度の高いクラスターはテトラメチルアンモニウムでは沈殿せず、水溶液のままでになる。この手法は、電気泳動移動度から、分離のための対カチオン選択を可能にし、非常に応用の広い手法になると期待できる。

今後の研究の推進方策

今後、他のリン酸などの他のオキソ酸イオンの濃度を変えながらMo154形成過程に反応させ、テンプレート効果を利用して様々なポリ酸をより選択的に形成できる可能性を模索する予定である。特に有機リン酸を用い、蛍光性や不安定な有機ラジカル種をクラスター内で選択的にカプセル化する手法創製へと発展させる

次年度の研究費の使用計画

薬品に充てる経費が24年度は見込みより少なかった。研究が予想以上に進展したため、25年度は研究に従事する学生の増員を見込んでいる。そのための、試薬代・学会発表旅費に充てるために予定である。

  • 研究成果

    (7件)

すべて 2013 2012

すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件) 学会発表 (4件)

  • [雑誌論文] Recent advances on polyoxometalates-based molecular and composite materials2012

    • 著者名/発表者名
      Y.F.Song, R.Tsunashima
    • 雑誌名

      Chem. Soc. Rev

      巻: 41 ページ: 7384-7402

    • DOI

      10.1039/C2CS35143A

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Incorporation of Cationic Electron Donor of Ni-pyridyl-tetrathiafulvalene with Anionic Electron Acceptor of Polyoxometalate2012

    • 著者名/発表者名
      R. Tsunashima, T. Matsumoto, N. Hoshino, W. Niiho, M. Kimura, K. Kondo, Y. Suyama, Y. Nishioka, J. Kawamata, S.-i. Noro, T.Nakamura, T. Akutagawa, K. Ishiguro
    • 雑誌名

      Dalton. Trans

      巻: 41 ページ: 10060-10064

    • DOI

      10.1039/C2DT30398A

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Exploring the mobility of nanoscale polyoxometalates using gel electrophoresis2012

    • 著者名/発表者名
      R. Tsunashima, C. Richmond and L. Cronin
    • 雑誌名

      Chem. Sci.

      巻: 3 ページ: 343-348

    • DOI

      10.1039/C1SC00542A

    • 査読あり
  • [学会発表] ゲル電気泳動を用いたモリブデンブルークラスター形成反応のクロマトグラフィー評価2013

    • 著者名/発表者名
      中村 一平、綱島 亮、石黒 勝也
    • 学会等名
      日本化学会春季年会
    • 発表場所
      立命館大学 大津市
    • 年月日
      20130322-20130325
  • [学会発表] カチオン性電子ドナーとポリオキソメタレートからなる無機有機複合分子系の構造と物性2013

    • 著者名/発表者名
      綱島 亮、松本 拓己、石黒 勝也、加藤 智佐都、西原 禎文、井上 克也、星野 哲久、芥川 智行
    • 学会等名
      日本化学会春季年会
    • 発表場所
      立命館大学 大津市
    • 年月日
      20130322-20130322
  • [学会発表] Stability of Fullerene-Shaped Metal-Oxide Nanocluster {Mo132} in Dilute Aqueous Solution2012

    • 著者名/発表者名
      Ryo Tsunashima,1* Takumi Matsumoto,1 Katsuya Ishiguro1
    • 学会等名
      International Conference on Emerging Advanced Nanomaterials
    • 発表場所
      オーストラリア ブリスベン
    • 年月日
      20121022-20121025
  • [学会発表] モリブデンブルー水溶液中における2012

    • 著者名/発表者名
      中村 一平、綱島 亮、石黒 勝也
    • 学会等名
      錯体化学討論会
    • 発表場所
      富山大学 富山市
    • 年月日
      20120921-20120923

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公開日: 2014-07-24  

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