研究課題/領域番号 |
24750130
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
樋口 博紀 九州大学, 先導物質化学研究所, 助教 (50432951)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | キラル液晶 / ブルー相 / 外的刺激応答 |
研究概要 |
高いキラリティーを有する高次のナノ構造液晶相(例えばブルー相)は非常にキラリティーに敏感であり、その発現機構は明らかになっていない。キラル分子から液晶分子にどのようにキラリティーを伝達するのかを理解し、如何に効率的にキラリティーを伝達するかがキラル液晶相の発現機構の解明に重要であると思われる。そこで本申請では光学活性部位としてビナフチル骨格を利用し、キラル分子構造を種々変化させることで体系的に検討し、効率のよいキラリティー転写法の確立を目的とする。導入する官能基の種類や位置によってキラル液晶相の特性向上にとどまらず、さらには外的刺激応答型キラル液晶相を創製し、高機能化を目指す。 平成24年度は、ビナフチル骨格にフッ素置換基を直接導入した誘導体を合成し、検討を行った。実用で用いられるフッ素系ネマチック液晶に対して、大きなねじり力と高い相溶性を示した。また、ブルー相の発現に用いられるこれまでのキラル剤よりもフッ素系ビナフチル誘導体のほうが幅広い温度範囲でブルー相を発現した。 光刺激によって光二量化をおこすアントラセンをキラル剤のビナフチル骨格に導入した誘導体についても検討を行った。アントラセンキラル誘導体を用いて発現させたブルー相に光照射を行うと、光二量化によってキラル剤の液晶に対する相溶性が低下しブルー相からキラルネマチック相へ相転移した。一方で熱解離を行うことでブルー相へ相転移し、外的刺激によって液晶相転移を制御できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成24年度に検討できなかった項目(キラル剤の分子構造の体系化)があったが、平成25年度に予定していたフッ素系キラル剤のブルー相における諸特性や外的刺激応答型キラル剤について検討することができたので、全体としておおむね順調に進展していると考える。
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度に検討できなかったキラル剤の分子構造(例えばメソゲン側鎖がビナフチル骨格に導入されたもの、ビナフチル部分にベンゼン環が縮合されたものなど)を有する誘導体を合成し、その諸特性を調査する。 スメクチック相を発現するホスト液晶とビナフチル型キラル剤を用い、層構造を有するTGB 相やスメクチックブルー相を発現させることができるか検討する。 平成24年度に合成したフッ素系キラル剤を用い、ブルー相の諸特性についてより詳細に検討を行う。 外的刺激によるキラリティーの制御(ねじり力とらせん方向)を検討する。平成24年度に合成した光反応性キラル剤は液晶への相溶性に問題があった。そこで長鎖アルキル鎖をアントラセン部分に導入し、相溶性の向上を目指す。このキラル剤を用いブルー相を発現させ、ネマチック相、キラルネマチック相、ブルー相の間で光による次元構造をスイッチングし、その動的ずり粘性などのレオロジー測定を行う。また、らせんの反転による光物性評価も行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
光学異性体分離用HPLCカラム、キセノン光源、実験器具、化学薬品、ガラス器具、光学部品、電気部品、旅費等に使用する。
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