高いキラリティーを有する高次のナノ構造液晶相(例えばブルー相)は非常にキラリティーに敏感であり、その発現機構は明らかになっていない。キラル分子から液晶分子にどのようにキラリティーを伝達するのかを理解し、如何に効率的にキラリティーを伝達するかがキラル液晶相の発現機構の解明に重要であると思われる。そこで本申請では光学活性部位としてビナフチル骨格を利用し、キラル分子構造を種々変化させることで体系的に検討し、効率のよいキラリティー転写法の確立を目的とする。導入する官能基の種類や位置によってキラル液晶相の特性向上にとどまらず、さらには外的刺激応答型キラル液晶相を創製し、高機能化を目指す。 最終年度はビナフチル部分にベンゼン環が縮環したキラル剤の検討を行った。一般的にキラル剤が液晶相のらせん構造を誘起する力の大きさは温度の上昇とともに小さくなるが、ビフェナントロールをキラル剤として用いた場合、温度の上昇とともに大きくなった。これは軸不斉骨格の縮環部分の影響によるものだと考えられる。また、ビナフチル骨格にフッ素置換基を直接導入した誘導体を用いたブルー相の電気光学特性は、従来のキラル剤と比較すると大きな変化は見られなかったが、電場印加時においてはより高速な応答を示した。
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