研究課題/領域番号 |
24750131
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研究機関 | 宮崎大学 |
研究代表者 |
松本 仁 宮崎大学, 工学部, 准教授 (90363572)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 光増感剤 / ポルフィリン / ベシクル / 酸素化反応 |
研究概要 |
本研究は、光増感剤である両親媒性ポルフィリン錯体(Pam)を吸着させたベシクル(ベシクル固定型増感剤)を作製し、光照射による有機化合物の酸素化反応系を構築することを目的としている。本年度は、(1)ベシクルとの相互作用が大きなPamの合成、および、(2)ベシクル固定型Pamの作製と酸素化反応効率の評価を行った。 1. Pamの合成 これまでに、Sb錯体としては、メトキシ基と長鎖アルコキシ基を軸配位子に有する誘導体(Pam1)を合成している。そこで、ベシクルの二分子膜との親和性の向上を目的として、二本のアルキル基を有するグリセロールを導入したPam(Pam2)を合成した。さらに、アルキルピリジニウム基を有するPam3、および、アルキル化グリコシル基を有するPam4についても合成した。 2. ベシクル固定型Pamの作製と酸素化反応効率の評価 ジパルミトイルホスファチジルコリンを用いたベシクルを調製し、Pam1および合成したPam2との親和性の高さを、吸着等温線を用いて評価した。Pam1では、ベシクルへの吸着はラングミュア型であり、結合定数は10の6乗M-1程度の大きな値を示した。一方、Pam2では、ラングミュア型とはならなかった。次に、Pam1による光増感酸素化反応は、9,10-ジメチルアントラセン(DMA)を標的分子として検討し、酸素化生成物の見かけの生成量子収率(Φ)を用いて評価した。Pam1とDMAをベシクルに吸着させた溶液におけるΦは、MeOH溶液中での約30倍大きな値となった。さらに、DMAによるPam1の蛍光消光実験、およびΦに対するDMA濃度依存性から反応機構を解析した結果、ベシクル溶液中でのDMAの酸化反応は、DMAからPam1の励起一重項への光誘起電子移動反応を経由する酸化プロセスであることが明らかとなり、ベシクル内での酸素化反応機構の解析方法を確立した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度は、(1)ベシクルとの相互作用が大きなPamの合成、および、(2) ベシクル固定型Pamの作製と酸素化反応効率の評価を目的とした。(1)については、Pam1に加えて、Pam2-4を合成できた。また、(2)については、Pamのベシクルとの相互作用は、吸着等温線を作成することで評価できることを示し、既存のPam1でも、吸着性が高いことが分かった。さらに、DMAを標的分子としたベシクル内での反応解析によって、ベシクル固定型増感剤の酸素化反応の解析方法を確立し、Pam1について、その反応過程を明らかにできた。当初計画で試みる予定のマイクロチャンネル反応器を用いた反応には至らなかったものの、Pam1についての結果の論文発表・学会発表、および、Pam3-4についての学会発表を行うことができたため、評価区分3と判断した。
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今後の研究の推進方策 |
H24年度におけるPam1によるベシクル内でのDMAの光酸素化反応の解析から、一重項酸素による酸素化反応系の構築には、光増感剤であるPamと基質とを隔てる必要があることが明らかとなった。そこで、今年度は、一重項酸素生成過程による酸素化反応系の構築に重点を置き、研究を進めることとする。基質としては、電子移動過程と一重項酸素生成過程とで異なる生成物を与えるtrans, trans-1,4-Diphenyl-1,3-butadiene等を選択し、生成物の解析を行う。また、ベシクルへのPamの固定化様式が、Pam1とPam2とで異なっていることが示唆された。そこで、Pamの固定型様式の違いによる酸素化反応への影響についても調べる。さらに、ベシクル固定型Pamで修飾したマイクロチャンネル反応器を作製し、酸素化反応を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
H24年度計画で実施する予定であったマイクロチャンネル反応器を用いた反応には至らず、反応器購入分が次年度使用額として生じた。今年度は、上記の推進方策に従い、マイクロチャンネル反応器の購入も含め、助成金を使用する計画である。
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