研究概要 |
我々は段階的な合成法を用いて、多孔性金属錯体(MOFs)の構成金属に貴金属を導入した多孔性“貴金属”錯体(NMOFs)の合成と、それを用いた高性能不斉触媒の創成を目的としている。 平成24年度は、配位子にトリメシン酸(BTC)を用いた新規NMOFsの合成をおこなった。BTCはHKUST-1と呼ばれるMOFの構成配位子で、HKUST-1は大きな比表面積や、安定で大きな細孔を有しているため、これを貴金属化したNMOFは不均一系触媒として高い性能を発揮する可能性がある。 段階的合成法の前駆体となるpaddle-wheel型Rh二核錯体[Rh2(H2BTC)4]を合成し、それをCu, Zn, Coを用いて集積化をおこなった。その結果、いずれの金属イオンにおいてもRh : M比が1 : 2のNMOF、[Rh2(BTC)4/3][M2(BTC)4/3]2 (M = Cu, Zn, Co)が得られた。粉末X線回折測定の結果、いずれのNMOFも構成金属がCuからなるHKUST-1, [Cu2(BTC)4/3]と同構造であった。BET比表面積はいずれも700 m2/g程度であり安定な細孔構造を有するNMOFsの合成に成功した。ジアゾ酢酸を用いたシクロプロパン化反応をおこなったところ、触媒活性は見られるが、細孔構造の崩壊も観測され、更なる条件検討が必要である。 一方、通常ZnやCoのみを構成金属に用いた場合、HKUST-1と同構造のMOFは得られない。しかし本方法では、前駆体に用いた[Rh2(H2BTC)4]の構造に引きずられるように、ZnやCoもpaddle-wheel型二核構造を形成し、結果HKUST-1と同構造になる事が分かった。これは、[Rh2(H2BTC)4]が構造指向試薬として機能していることを示唆しており、MOFsの新たな合理的設計法として期待できる。
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