研究課題/領域番号 |
24750140
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 分子科学研究所 |
研究代表者 |
近藤 美欧 分子科学研究所, 生命・錯体分子科学研究領域, 助教 (20619168)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 錯体化学 |
研究概要 |
人工光合成系の構築による水の完全光分解系の達成は、現在のエネルギー・環境問題を解決する一つの解である。本研究では、高触媒活性を有する表面構造の構築を最終目的とし、錯体フレームワーク二次元結晶を利用した錯体プラットフォームの構築を提案する。本錯体プラットフォームは、界面構造ならびに電子状態を緻密に制御できる点で既存の基板材料にはない優れた特性を有する。すなわち錯体プラットフォームを利用することで、(1)界面構造制御による表面反応の動作原理解明、(2)界面電子状態制御を利用した新規高効率反応の開拓が可能になると考えられる。 当該年度においては、2次元界面上への配列が可能な触媒分子の創生を目的とし、触媒サイトと自己集積部位を併せ持つ分子の設計・合成ならびに結晶構造中での分子配列の解析を行った。具体的には、触媒サイトとしてRh(II)のpaddle-wheel型金属2核錯体を、相補的相互作用部位としてアレーン‐パーフルオロアレーン相互作用を選択した。アレーン部位とパーフルオロアレーン部位を三重結合により連結した新規カルボン酸配位子を設計・合成した後、配位子交換反応を利用することでRh(II) 並びにCu(II)のパドルホイール錯体の合成に成功した。さらに、これらの機能性ユニットの単結晶構造解析を行うことで、室温における自己集積パターンに関して検討を行った。その結果、得られたパドルホイール錯体の自己集合様式はアレーン‐パーフルオロアレーン相互作用により独占的に支配されることが判明した。通常分子性金属錯体の自己集合においては、多数の配列パターンが混在し、その集合様式を予見することは非常に困難である。しかしながら、本研究で用いた機能性ユニットにおいては、アレーン‐パーフルオロアレーン相互作用により一義的な配列パターンの構築に成功し、構造体の戦略的設計指針を得ることに成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究提案においては、paddle-wheel型金属2核錯体により構築される錯体フレームワークを用い、2次元結晶状の錯体プラットフォームを作成することを目的としている。しかしながら、置換不活性なRh等の金属イオンにより構築されるpaddle-wheel型金属2核錯体を室温で高次元に配列する有効な方法は示されていなかった。 平成24年度の研究においては、触媒活性等の高い機能性を有しながら、2次元結晶型構造体の構築に不向きとされてきたRh(II)のpaddle-wheelユニットを室温で高い設計性を保った状態で自己集合させる手法の開発に成功した。さらに、得られた構造体は反応基質の濃縮場となりうるような細孔構造を有していることが判明した。 よって、本研究で新たに得られた手法を用いることにより、様々な金属イオンを有する金属錯体を望みの構造体へと電極界面上に自在配置する可能性が示されたことから、多電子変換反応を高効率化可能な錯体プラットフォーム構築にあたっての準備は順調に進んだといえる。
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度に得られた知見をもとに、平成25年度においては、室温での自己集積を利用し、paddle-wheel型金属2核錯体を基板表面上に展開し、2次元結晶の構築を試みる。 バルク状態における結晶構造解析の結果から、得られたRh(II)paddle-wheel型錯体は基板上において疎水性の小さな孔を有した井桁型の自己集合様式をとると予想される。さらに前年度における予備的な知見から、この錯体は二酸化炭素の還元反応に対し活性を有することが見出された。よって、基板上に細孔すなわち反応基質の濃縮場と触媒サイトを精密に配置することが可能になると考えられる。 そこで、本年度においては(1)2次元結晶の構築並びに構造体のSTMによる直接観測、(2)電気化学的条件下における触媒反応の解析の2つの目標を設定し、最終的には高効率た電子変換反応が可能な電極材料の構築を目指す。目標(1)に対しては、種々の濃度・溶媒を用いた単分子膜の構築を行い、STM観測により望みの構造体が構築されていることを確認したいと考えている。目標(2)に関しては、溶液状態・二酸化炭素雰囲気下におけるバルク電解により反応生成物の同定を行い、本ユニットの触媒能に関し評価を行う。 また、上記の研究目標により得られた知見をもとにユニットの触媒能・自己集積能に関して更なるチューニングを行い、電極界面上で安定に触媒反応が進行する新規超分子構造体の構築を目指したいと考えている。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度においては前項でも述べたとおり、電極界面上における超分子構造体の構築ならびに構造体のSTMによる直接観測をもちいた構造決定と触媒部位の機能評価を合わせて行う予定である。そこで、STM計測にかかる物品(STM探針・電極として用いる単結晶基板)ならびに触媒機能評価にかかる物品(CO2ガス・バルク電解用セル・電極等)の購入が必要となる。さらに、実験を行うにあたっては、機能性分子の合成にかかる試薬類、ガラス器具、高純度ガス等の消耗品は不可欠である。また、研究代表者や協力者に対する旅費(研究資料収集、研究成果発表)も必要と考えられるためこれらの予算を計上している。
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