研究課題/領域番号 |
24750140
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研究機関 | 分子科学研究所 |
研究代表者 |
近藤 美欧 分子科学研究所, 生命・錯体分子科学研究領域, 助教 (20619168)
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キーワード | 錯体化学 / 無機化学 / 結晶構造 |
研究概要 |
本課題では、基質の濃縮が可能な空間(チャネル)を有する構造体を作成し、多電子移動を伴う物質変換反応の高効率化・高選択化を目指すこととしている。 そこで、触媒サイトとしてRhのpaddle-wheel型金属2核錯体を選択した。Rh(II)ダイマーは水をプロトン源とした水素発生反応等の物質変換反応の触媒として機能することが知られており、その反応サイトはaxial位であると考えられている。一方、paddle-wheel型金属錯体はチャネルを有する構造体の構築に汎用されているが、その多くはaxial位にリンカーとなる配位子を配位させることで連続構造を得ている。特にRhにおいては現在までに、反応サイトが存在する構造体の例は存在しない。 今回我々は、多点型アレーン‐パーフルオロアレーン相互作用をチャネル構築の駆動力として選択し、反応サイトとチャネル構造が共存しうる構造体の構築を試みた。そして、アレーン部位とパーフルオロアレーン部位を三重結合により連結した新規カルボン酸配位子Lから成るRh2L4(THF)2型の組成を持つ錯体の合成に成功した。得られた金属錯体の単結晶構造解析を行ったところ。その結果、錯体の自己集合様式は多点アレーン‐パーフルオロアレーン相互作用により独占的に支配されることが判明した。そして、結晶構造中には2次元井桁型シート構造が存在し、更にシートが重なり合うことで、反応場となりうる細孔を有した構造体が構築できることが明らかになった。また同種の構造体はCuを金属イオンとして用いた場合あるいは、axial位に異なる溶媒分子が配位した場合にも構築できることが明らかとなった。すなわち、本研究により、チャネル内包型構造体の設計指針に関して知見を得ることに成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度までの研究により、多点型アレーン-パーフルオロアレーン相互作用を用いることで、従来まで構築が達成されていなかった、反応サイトと基質濃縮場を同時に併せ持つ構造体の構築に成功した。また、予備的な測定の結果から、本錯体のモデル構造が二酸化炭素と反応性を有していることが示唆される結果を得ている。更に、この構造体は、2次元シート構造を有していることから、本研究で目標としている界面上への2次元構造体の構築に非常に適したものであると予想される。また、結晶化の条件を変化させることで、このシート構造を変換できることが単結晶X線構造解析の結果から明らかになっている。すなわち、本構造体は多電子移動を伴う物質変換反応である二酸化炭素の還元反応に対して活性を有する触媒サイトを電極表面上へと展開する手法の開発に向けて、順調に新手インしているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
前項までに述べたとおり、平成25年度までの研究により、界面上での構造体構築が可能であると予想される新規触媒分子の開発に成功したといえる。今後は、得られたショック倍分子を基板表面へと展開し、電極表面上での構造体の構築について検討を行っていく。構造体の同定にあたっては表面X線回折測定・走査型トンネル顕微鏡(STM)測定・ラマン分光法等を用いる予定である。望みの構造体が得られた場合には、さらに二酸化炭素雰囲気下での電気化学測定を行い、構造体の触媒能に関しても評価を行っていきたいと考えている。
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次年度の研究費の使用計画 |
本研究課題では、電極界面上への触媒分子の高次構造の構築を目指して、研究を行ってきた。その結果、新規触媒分子の開発に成功し、またその結晶構造中において、興味深い集積構造を見出してきた。現在は、得られた触媒分子の基板表面への展開を試みている最中である。しかし、高次構造の構築には多数の実験条件を網羅的に検討する必要があることが判明したため、次年度以降においても研究を継続する必要があると考え、補助事業期間の延長を希望した。 次年度は、前項でも述べたとおり、電極界面上での触媒錯体の高次構造構築に向け、その構築条件を最適化することを目的とする。そのためには、構造構築時に用いる溶媒の種類・濃度・温度・基板の種類などの条件を検討する必要がある。そこで、助成金の未使用分はこれらの条件検討に用いる溶媒等の試薬類、電極基板の購入に充てる予定である。また、精密な温度制御が、構造体の構築にあたって必要であると判断された場合には、温度制御システムの購入も検討したいと考えている。
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