研究課題/領域番号 |
24750143
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研究機関 | 独立行政法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
亀田 直弘 独立行政法人産業技術総合研究所, ナノチューブ応用研究センター, 主任研究員 (20517297)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 自己組織化 / ナノチューブ / ナノチャンネル / ホスト-ゲスト / エネルギー移動 / 光捕集アンテナ / 光触媒 / 人工光合成 |
研究概要 |
色素分子組織化ナノチューブのライブラリ構築を行った。グルコースアミンと飽和・不飽和脂肪酸の縮合反応により糖脂質分子を合成した。糖脂質分子と色素部位として種々の芳香族ボロン酸(チオフェンボロン酸、フェニルボロン酸、ビフェニルボロン酸、ナフタレンボロン酸、アントラセンボロン酸、ピレンボロン酸)の脱水反応により合成した芳香族ボロン酸結合型糖脂質分子(モノマーと略す)の有機溶媒中での自己組織化挙動を詳細に検討した。得られた自己組織化ナノ構造体の形態は、ナノチューブ、ナノテープ、ナノシート、ナノスフィアと、モノマーの分子構造に大きく依存することが明らかとなった。ナノチューブに関しては、種々の分光測定、熱分析測定により、分子パッキングを明らかにした。 ナノチューブの膜壁内に組織化された芳香族部位の光・電子物性を評価した。チオフェン組織化ナノチューブ⇒チオフェン部位の酸化重合反応により、導電性機能の発現に成功した。ナフタレン組織化ナノチューブ⇒ナノチャンネルにアントラセンをドープしていくと、ナフタレンの蛍光強度が減少する一方でアントラセンの強い蛍光が出現した。膜壁内のナフタレンからナノチャンネルの包接化アントラセンへの効率的なエネルギー移動に起因することが明らかとなった。ピレン組織化ナノチューブ⇒ナノチューブは、ピレンのエキシマ-に由来する緑色蛍光を発することが分かった。熱相転移現象により、結晶固体状態のナノチューブを液晶流動状態のベシクルへと形態変化させると、ピレンのモノマーに由来する青色蛍光が観察された。即ち、当該ナノチューブは、サーモクロミズム機能を有することが明らかとなった。 光機能性ゲストとしてサイズや物性が異なるフラーレン(1nm、疎水性)や白金錯体(2nm、親水性)、金ナノ粒子(5~10nm、親水性)等を、ナノチューブのナノチャンネル内へ効率的に包接化する手法を確立した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
分子設計、自己組織化制御により、本年度の目標であった色素分子組織化ナノチューブのライブラリ構築を果たした。また、チューブ形状に色素分子を組織化すると、テープ形状やシート形状、スフィア形状では見られない光・電子機能の発現に成功した。特に、ナノチューブの膜壁(ドナー)からナノチャンネルに包接化したアクセプターへ、エネルギー移動が効率的に起こるなどの現象を見出すことができた。このような光捕集アンテナ機能の発現は、電場増強されたナノチャンネルを創出できることを意味しており、光触媒システム構築に向けた重要な知見である。さらに、触媒活性点として機能し得る白金錯体等をナノチューブの内表面のみに位置選択的に配置できたことは重要である。 以上の成果を、国際誌論文掲載2報、国際学会4件、国内学会10件(依頼招待講演3件)により、国内外へ広く発信した。
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今後の研究の推進方策 |
色素分子組織化ナノチューブを用いた光触媒システムの構築を目指す。ナノチューブのナノチャンネルに二酸化炭素還元光増感材としてレニウム錯体、水素生成光増感材としてルテニウム錯体、触媒活性点としてコバルト錯体や白金ナノ粒子、電荷移動錯体用電子アクセプターとしてビオロゲンを包接させ、それぞれ二酸化炭素→一酸化炭素、水素イオン→水素に対する光触媒システムの構築を試みる。金属錯体や金属ナノ粒子の均一溶液系との比較、直接励起系との比較により光触媒の活性増強を明らかにする。ナノチューブの膜壁からナノチャンネルの包接化錯体へのエネルギー移動とそれに続くMLCT(metal-to-ligand charge transfer)形成、またナノチューブの膜壁内の芳香族基と包接化ビオロゲンとの間の電荷移動錯体形成と励起による電荷分離状態形成、それに続く金属錯体やナノ粒子へのCT等、それぞれの過程における効率を詳細に解析する。ナノチューブのエネルギードナー及び電子ドナーとしての機能を明らかにする。ナノチューブに金属錯体やナノ粒子、そして発光性分子を固定化または包接化することにより(束縛効果)、バルク中では問題となるそれらゲストの紫外線照射による劣化、種々の消光因子を抑制できる可能性もある。そこで、ナノチューブのナノチャンネルにおける包接化物の安定性、経時変化、溶媒の物性変化との関連性等を詳細に検討し、ナノ空間の特性解明も併せて行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
主に試薬等の消耗品:300,000円 国内外学会への参加旅費:400,000円 その他として、論文の英文校閲代、掲載誌代、別刷り代:300,000円
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