昨年度に引き続き、色素分子組織化ナノチューブのライブラリ構築を行うため、芳香族ボロン酸R-B(OH)2の脱水反応により合成したボロキシン(R-BO)3の有機溶媒中における自己組織化挙動を詳細に検討した。自己組織化の形態は、芳香族基に大きく依存し、R = チエニル基のボロキシンはナノファイバー、R = フェニル基とビフェニル基はナノロッド、R = ナフチル基とアンスリル基はナノテープを形成した。R = ピレニル基のボロキシンが、内径約8 nm、膜厚約4 nmのナノチューブを形成することが分かった。分光測定により分子パッキングを解析したところ、ナノチューブにおいては、ボロキシンがJ会合体を形成していることが明らかとなった。 このボロキシンナノチューブは、ピレンのエキシマ-に由来する緑青色蛍光を示した。アクセプター分子をボロキシンナノチューブのナノチャンネルにドープしていくと、ピレンエキシマ-強度が減少する一方でアクセプター分子の強い蛍光が出現した。膜壁内のピレンからナノチャンネルにカプセル化したアクセプター分子へのエネルギー移動の効率はほぼ100%に達した。 色素分子組織化ナノチューブにCO2を還元可能な光触媒としてRe錯体をカプセル化したところ、色素の蛍光が消光、色素の励起エネルギーがRe錯体に移動した。カプセル化したRe錯体を直接励起した場合と比較し、色素励起によるエネルギー移動を利用した方が数倍高い触媒活性を示した。また、この光触媒活性は、Re錯体の均一溶液系と比較しても高かった。ナノチャンネル内でRe錯体の光触媒活性を増強させることに成功した。
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