研究課題/領域番号 |
24750144
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研究機関 | 公益財団法人九州先端科学技術研究所 |
研究代表者 |
土屋 陽一 公益財団法人九州先端科学技術研究所, その他部局等, 研究員 (10517212)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 色素包接錯体 / ポルフィリン / シクロデキストリン / ヘテロ接合 / 単結晶X線構造解析 |
研究概要 |
1)シクロデキストリン-金属ポルフィリン包接錯体結晶の作成 シクロデキストリン-ポルフィリン系の色素包接結晶において、ゲストであるポルフィリンがフリーベース、ニッケル配位に関わらず包接結晶を作成できることを既に見出している。そこで、様々な中心金属を有するポルフィリンについて色素包接結晶の作成を行い、結晶構造に対する影響について検討した。テトラフェニルポルフィリン(TPP)の中心にマンガン(III)、鉄(III)、コバルト(II)、銅(II)、亜鉛(II)を包接したそれぞれについて色素包接錯体結晶を作成し、単X線結晶構造解析を行った。その結果、いずれの金属ポルフィリンにおいても包接結晶が得られることがわかり、また、マンガンポルフィリン、鉄ポルフィリンについてはアキシャル位に塩化物イオンが配位していることや、亜鉛ポルフィリンについては水が配位していることが明らかになった。いずれの結晶構造もフリーベースポルフィリンやニッケルポルフィリンとほとんど格子定数が変わらないことがわかった。 2)異なる色素分子をゲストとした色素包接錯体の混晶・ヘテロヘテロ接合型結晶の作成 シクロデキストリン-ポルフィリン系の色素包接結晶において、ゲストであるポルフィリンの構造を変えても全体の格子構造にほとんど影響を及ぼさないことを既に見出している。これは異なる構造のポルフィリンをゲスト分子とした包接結晶の混晶やヘテロ接合型結晶の構築が可能であることを意味する。そこで、種類の異なるポルフィリンを含む包接結晶の作成を試みたところ、混晶と思われる結晶を得た。しかし構造解析が困難であった。一方、ヘテロ接合型包接結晶の作成を試みたところ、フリーベースポルフィリンの色素包接結晶への金属の錯化(含浸法)や異なるゲストポルフィリンの包接結晶を逐次成長させる手法(逐次成長法)によってヘテロ接合型包接結晶が得られることが判った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度に色素包接錯体結晶の種類を大幅に増やすことに成功し、ヘテロ接合型色素包接錯体結晶の作成法を見出すことができた。これまでの結果より、次年度はさまざまな組み合わせのヘテロ接合型色素包接結晶のヘテロ接合型色素包接結晶を作成し、その構造及び物性評価を行うことが可能となった。
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今後の研究の推進方策 |
包接結晶中における色素の配列制御の検討とヘテロ接合型色素包接結晶の創製: 平成24年度の結果を元に、分子認識によって包接錯体の混晶において色素が3次元のエネルギー勾配を持って配列した、新しい超分子結晶材料を作製するために有効な条件を明らかにし、その格子構造と光化学特性及び光電気化学特性の相関を明らかにする。まず、ポルフィリンmeso位官能基の分子認識による混晶中における色素配列制御を目的として4つのmeso位にそれぞれ適切な官能基を導入したポルフィリンを設計・合成し、結晶成長時の分子認識による異種ポルフィリンの配列制御について検討を行う。作製した各混晶について、X線回折による構造解析、蛍光スペクトル測定および蛍光寿命等の分光特性を調べることで、色素包接結晶中の色素の配列構造が物性及ぼす影響について検討を行う。また、3種以上の色素を用いた配列制御やポルフィリン以外の色素をゲストに用いた配列制御についても検討を行う。さらに、ヘテロ接合型色素包接結晶の構造-特性相関の解明と高効率光エネルギー変換系への応用検討を目的として、作製した各色素包接結晶の、各結晶面における光学特性、電気特性、光電気化学特性について検討を行い、X線回折の結果と併せて構造-機能の相関を明らかにする。ヘテロ接合型色素包接結晶の構造と機能の相関を明らかにすることで、ヘテロ接合型色素包接結晶材料を高効率光エネルギー変換デバイスとして利用する足がかりを得る。
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次年度の研究費の使用計画 |
成果発表等における旅費:260千円 試薬:500千円 消耗品:500千円 計:1,260千円
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